ミストウォーカーがおくるシミュレーションRPG・アルカイックシールドヒートより、
崎元仁作曲、『ブルネクの戦い』。火炎蛇戦で流れます。
FFの生みの親である坂口博信氏率いるミストウォーカーが開発した本作。突如現れた炎の蛇によりすべてを焼き尽くされ、悲嘆に暮れていたミリニア王国の王女・アイシャは、なぜか死んだはずの摂政・ブルネクら王国の仲間たちが灰の体で蘇生したことを受け、炎の蛇と灰の謎を求めて旅に出ることになる。ミッションに出撃し、マス目状のフィールドで三人一組のチームを組んで移動と戦闘をおこなう、オーソドックスなターンベース型SRPGで、戦闘システムもスタンダードなコマンド式を採用している。灰の戦士はユニットとして共に戦えるだけでなく、生身の人間に力を受け継ぐエンゲージシステムにより、キャラロストする代わりにステータス強化やスキル継承が可能で、物語とも密接に関わる仕組みとなっている。操作がタッチペンのみ、ユニットの種類やマップのバラエティがやや乏しいなど、細かな粗はあるが、DS最高峰とも言える美麗なグラフィックを誇る意欲作に仕上がっている。
本作の音楽を担当するのは岩田匡治氏と崎元仁氏。1曲のみの参加で笠井勲氏も携わっている。崎元氏と岩田氏は音楽制作会社ベイシスケイプ所属の作曲家(岩田氏は退社済み)で、笠井氏は本作の開発協力をしているラクジン所属の作曲家である。本作では音楽が大きな強みの一つで、FF繋がりで言えばタクティクスでの作曲経験がある崎元氏らが手がける本格的なオーケストラサウンドが、王道(厳密に表現するなら、すこし捻りもある準王道)ファンタジーに見合った空気感を漂わせる。サウンドトラックは高音質版と内蔵音源版の両方が2枚組で収録されている。
当初からの旅の目的であり、物語の鍵を握る存在である火炎蛇との戦いで流れるのがこの曲である。イントロから様々な管弦楽器が幾重にも絡み合って奏でられる重厚で壮麗な調べが特徴で、烈火のごとき勢いで畳みかけるように曲が展開する。猛々しく吼えるトランペットに、激しくも華やかな音色を紡ぐバイオリン、主旋律に引けを取らぬ存在感を放つ疾走感あふれるドラムロールとが相まって、思わず火傷しそうなほどの凄まじい熱気と興奮を生み出す。1分過ぎからは一旦ドラムが止まり、艶やかなコーラスが加わって神秘的な壮大さを醸すが、その後ループに突入して再びドラムが鳴り出すことで、メリハリを利かせながら最高潮の盛り上がりを維持し続ける。ちなみに曲名にあるブルネクは、王国の摂政にしてアイシャの親代わりである頼れる忠臣のことを指す。
曲名の割に、それほどブルネクと結びついた曲という印象はないのですが、彼のテーマ曲として考えてみるとそれはそれで合っているような気もします。