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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1594 『建設中ビル』(塚原義弘/ブラッディロア4/PS2)

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エイティングがおくる3D獣化格闘ゲームブラッディロアより、

塚原義弘作曲、4の『建設中ビル』。同名のステージで流れます。

人から獣へ姿を変えて格闘するブラッディロアシリーズのうち、ナンバリング4作目であり現時点の最終作にあたる本作。前作の紋章事件の後、生まれ得ざるものの襲撃により自然意思の象徴たる龍の封印が緩まり、各地で異変が相次ぐなか、獣人たちは生まれ得ざるものと龍の脅威に立ち向かうことになる。獣化を軸にした豪快な駆け引きはそのままに、本作では新規3組+隠し1人を加えた計18キャラによる血生臭くも悲愴な闘いを楽しめる。操作性は概ね前作を踏襲しているが、新たにボタン押下中は投げ技以外を自動回避しつつタイミング合わせで反撃可能なカウンターエスケープが実装された。また、人間と獣人の体力ゲージの仕様が変更され、これまでは人間ゲージが尽きた時点でK.O.だったが、本作では獣人ゲージが残っていれば自動的に獣化するほか、人間状態での攻撃や被弾で獣人ゲージが回復するようになった。前作では短時間で効果が切れた超獣化は、本作では獣人ゲージがある限り解除されなくなった。物語仕立てのアーケードに加え、タイムアタックやトレーニング、対人戦、さらには自分好みにキャラを育成して15種のアビリティを組み合わせられるキャリアモードが収録されている。総じて大味ながら熾烈な遊び心地のある仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは塚原義弘氏。音楽制作会社スタジオリッチョの代表である。ブラッディロアシリーズの作曲に携わるのは本作が初めてだが、作曲に限定しなければ2で効果音制作を手がけた経験がある。本作ではシリーズおなじみのバイオレントなロックサウンドを受け継いでいて、大半の楽曲は氏自身がギター演奏を担っている。また、物語上で龍をめぐって和風の寺院や巫女などが登場するのにあわせて要所要所で和楽器を取り入れている。なかには同じ曲のなかで鐘やオルガンなどのゴシック感の強い洋風な音色と三味線や尺八といった和風な音色を両方ふんだんに用いて和洋折衷の昂揚感を漂わせるものもある。サウンドトラックには短いジングルや同じ曲の差分アレンジなども含めて収録されている。

建設中ビルで流れるのがこの曲である。時間帯は夜、大きく浮かぶ上弦の月を背景に建設途中の高層ビルの屋上で戦うことになる。夜の都会という雰囲気にぴったり合ったジャズ・ファンク系の曲調が印象的で、イントロからしてパンチとキレの利いたインパクトに満ちている。ピアノとギター、そして7秒から参戦するサックスのダンディーなセッションがなんとも鮮やかで、34秒からしばらく警報音のように一定間隔で音色を鳴らすことで適度に危機感とそれに伴うスリルをもたらしてくれる。1分2~5秒でパーカッションとエフェクトのみで溜める間を置いた後、1分6秒から満を持してサックスが縦横無尽の演奏を披露する。特筆すべきは1分9秒や1分16秒で急激にギターが雄叫びを挙げるくだりで、勢いに乗って1分20秒には主旋律を掻っ攫うようになる。そのまま最後までギターの独壇場が続く。都会的なムードと野性的なエネルギーが見事に共存した一曲である。

お洒落はお洒落でも上品ではなくてダーティーで不健全な感じが出ているのがいいですね。ちなみに初出年度は先行で発売された北米版に合わせて〈2003年の曲〉としています。