VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1507 『N.G. エヌジー』(神保直明/NG/PSV)

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エクスペリエンスがおくる心霊ホラーアドベンチャー・NGより、

神保直明作曲、『N.G. エヌジー』。メインテーマとして流れます。

死印に続くエクスペリエンス製の心霊ホラーシリーズ第2弾にあたる本作。1999年の東京を舞台に、不良高校生の鬼島空良は、義理の妹の愛海の失踪をきっかけに怪異が蔓延る非日常の世界に足を踏み入れ、迫る死に抗うべく戦うことになる。ダンジョン探索風の要素を含むジャパニーズホラー系のテキストアドベンチャーで、基本的なコンセプトや世界観は前作を受け継いでいるが、登場人物を一新して独立した一つの物語として構成されている。物語を進めていくうえでプレイヤーの判断によって文字通り命取りとなる選択の重さや、道具と知恵を組み合わせて挑む怪異との対決など、前作でみられたゲーム性は概ね健在である。前作では怪異戦にターン制限があってコマンドバトルに近い駆け引きがあったが、本作は道具の使いどころを見極めて攻略していく推理的なアプローチに変更された。また、死体の描写やホラー演出、全体的なシナリオのボリュームなど、作品の肝となる部分が前作から軒並み強化されている。雰囲気はおぞましいが触り心地は遊びやすくまとまった仕上がりとなっている。後にPS4、PC、スイッチに移植された。

本作の音楽を担当するのは神保直明氏。フリーランスの作曲家で、エクスペリエンス製の作品には頻繁に携わっている。心霊ホラーシリーズには現時点で3作ともすべて作曲を手がけていて、シリーズを通じて世紀末感あふれる伝奇ホラーの作風を如実に表現している。本作でも不気味な効果音や民謡風の歌声を散りばめて寒気を誘うムードを形成しているが、なかには心地良いスムーズジャズやメロディアスなピアノ、チルポップなボーカル曲など毛色の異なる楽曲もある。各シーンやシチュエーションに寄り添う形で聴き飽きない工夫が凝らされている。サウンドトラックについては、ボイスドラマ付きで本作の楽曲が収録されたもののほかに、心霊ホラーシリーズの楽曲群をまとめたサウンド全集やボックスが存在する。

本作のメインテーマとして開始直後のイベントや最後のスタッフロールなどで流れるのがこの曲である。どこまでも深く魂に刻み込むように響く鉄琴の音色から始まり、5秒で神楽鈴を鳴らすと、はっと目が醒めて真理に気付かされるような感触を与える。徐々に音色を増やして圧を強めていくなかで、28秒あたりから主旋律として口笛が加わるようになる。その調べは和風の妖しさと切なさが詰まっていて、後ろで激しくやるせないエレキギターが伴奏を担うことでいっそう惹かれる響きを生み出している。41秒で前触れなくピアノが入って神楽鈴を添えると、それを境にホラーらしい歪みが目立つようになる。58秒で口笛に代わってエレキギターが主役を掻っ攫い、ますます悲惨で切実な印象が強まるが、それでもまだ序の口に過ぎない。1分12秒でキーが上がり、1分19秒から鉄琴と口笛が代わる代わるフレーズを反復することで、音を通じて事の重大さと深刻さを知らしめて当事者意識を植え付けられる。世にも数奇な一曲である。

何と言ったら良いのか、遅効性でじわじわ響いてきてどんどん抉られる感じがたまらないですね。