VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1048 『Mysterious Sea』(神保直明/レイギガント/PSV)

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エクスペリエンスがおくる3つの運命のRPGレイギガントより、

神保直明作曲、『Mysterious Sea』。無限古礁で流れます。

GENERATION XTHシリーズなどで知られるエクスペリエンスが開発し、バンダイナムコが販売するオリジナル作品として登場した本作。巨大な怪物・ギガントによる襲撃を受けた近未来を舞台に、人間に寄生して力を授ける半生命体・ヨリガミに選ばれた三人の主人公が、ギガントの脅威に立ち向かうことになる。一弥、カイル、ニルの3人の視点でメガロサイトと呼ばれるダンジョンを攻略して物語を進めるダンジョンRPGである。戦闘はパーティ全員が共有するAP(戦闘中のみならず探索中も増減する)を消費して行動するコマンド式を採用しているほか、必殺技を発動するために音楽ゲームのようにリズムに合わせてコマンド入力するスラッシュビートモードというシステムを搭載している。ツリー型の成長要素や体重の増減によるステータス変化など、キャラ育成の自由度は確保されているが、全体的に甘めなバランスかつ周回要素なしの控えめなボリュームで、システムの独自性が光る意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは神保直明氏。フリーランスの作曲家で、GENERATION XTHシリーズをはじめ、エクスペリエンス製の作品に数多く携わっている。本作では音ゲーのような要素を取り入れているだけあって、スラッシュビートモードで流れる専用曲はもちろん、楽曲全体がスタイリッシュでパワフルな逸品揃いとなっている。主人公別に戦闘曲やダンジョン曲が用意されていて、主な傾向として一弥編はビッグバンド系のファンキーな雰囲気、カイル編は電子音楽調のシャープな雰囲気、ニル編はストリングス重視のクラシカルな雰囲気を楽しめる。サウンドトラックはパッケージ版の初回封入特典としてダウンロード用のコードが付属されていたが、現在は入手方法がない。

無限古礁で流れるのがこの曲である。無限古礁はニル編に登場するメガロサイトで、海底遺跡の侵食跡に広がる水中のダンジョンである。幻想的な光景を彩るにあたって、流れるようなピアノと、弦を指ではじくピチカートによるイントロで、瞬く間に息をのむほどの美しさを印象付ける。高い音から低い音へとゆっくり下がっていくフレーズを何度か反復するうちに、ピチカート以外のストリングスの伴奏が加わるようになる。30秒あたりで主旋律が入ると、その透き通った音色が安らかな神秘を生み、52秒頃からは同じ旋律を弦の音色がなぞることで、一味異なる重厚な趣を漂わせる。そのまま穏やかな曲調を貫くかと思いきや、1分16秒から急に流れが変わり、しばらく弦とピアノが躍動感あふれるワルツを奏でる。一連のフレーズを終えると、また元の調子に戻り、ループ部分へと繋がる。水ならではの変幻自在な特性を象徴するかのような鮮やかな緩急に満ちた一曲である。

溜め息が出るほど綺麗な曲ですね。ニル編の戦闘曲『Flying witch』も、弦とピアノが活き活きしていて大好きです。あわせてどうぞ。

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