エクスペリエンスがおくるディストピアダンジョンRPG・黄泉ヲ裂ク華より、
神保直明作曲、『傷女ルキ』。ルキのテーマとして流れます。
エクスペリエンス製の新作ダンジョンRPGとして登場した本作。高度成長期に突如出現した巨大構造物・黄泉がもたらす新資源により、黄泉景気で潤う1979年の東京を舞台に、危険な採掘を担う零細企業の課長である主人公は、訳も分からず閉じ込められた黄泉内部から脱出すべく足掻くことになる。黄泉はグロテスクな怪物が彷徨う地下迷宮で、主人公ら探行士は迷宮内でのみ扱える超能力を操って脅威に立ち向かっていく。戦闘は最大6人編成のターン制コマンド式で、スイッチブーストと呼ばれる全体効果(1ターン限定で、MPコストをなくす、被ダメージを軽減する、といった恩恵が得られる)を駆使して戦う。迷宮攻略はマス目を進む典型的なダンジョンクロウルの形式に倣っていて、一見通行不能でも扉や架け橋を建設して道を拓いたり、任意の場所に敵シンボルを設置して稼ぎポイントにしたりできるなど、軽いダンジョンビルド要素が含まれる。自動移動、ファストトラベル、オート戦闘、高速化などの便利機能に加え、短期目標のクエスト類や収集要素も完備されている。ストイックな遊び心地と配慮の利いたゲームデザインがうまく噛み合った仕上がりとなっている。後にSteamに移植されたほか、廉価版が発売された。
本作の音楽を担当するのは神保直明氏。フリーランスの作曲家で、エクスペリエンス製の作品にはGENERATION XTHシリーズや剣の街の異邦人など、数多くのタイトルに携わっている。本作の世界観は、昭和日本の浮ついたようで哀愁がかった独特な空気感と、迷宮内に佇む異世界ダークファンタジーの雰囲気、さらにはカニバリズムや猟奇思想といった背徳的な作風を混ぜ合わせている。それに合わせて、音楽はラッパやギターを用いた派手やかなものから、重く爛れるようなアンビエント系、荘厳でクラシカルな曲調まで、バラエティ豊かな楽曲が揃っている。また、作中の流行歌という体でボーカル曲も収録されている。サウンドトラックについては、一部の店舗における購入特典としてミニサントラが付属されていたが、全曲収録のものは未発売である。
ルキのテーマとして、主にボス戦後に入手する遺物を彼女に渡す際に流れるのがこの曲である。ルキは物語の鍵を握る重要人物で、全身傷だらけで車椅子に乗った謎の少女である。彼女は神の子として奇跡を起こせる力を持つが、強すぎるトラウマと苦しみに苛まれ続けたがゆえに、その在り様は儚くか弱い。そんな彼女の傷心に寄り添うように、アコースティックギターの切ない音色が、何度も似通ったフレーズを反復して粘り強く響く。10秒からクワイア風の旋律が加わると、相変わらずメランコリックだが、息をのむほど幻想的で心地良い印象を与える。その一方で、曲冒頭から絶えず耳につくシンセを鳴らすことで、落ち着くと同時に鬱屈とした雰囲気を漂わせる。うっとりするほど美しく、かすかに芯の強さも感じられるが、それ以上に憐れみを抱かずにはいられないような、非常に感傷的な一曲である。
遺物を渡すシーンは、初めは不穏な曲(下の動画)が流れて、そのあと車椅子の効果音とともにこの曲が流れ出すので、なんとなく2曲でセットな感じがします。あわせてどうぞ。