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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1506 『4STAGE 風の岩山』(西村達也・山口真理/ミッキーのマジカルアドベンチャー/SFC)

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ディズニーのミッキーマウスを題材とする、

カプコンがおくるアクション・ミッキーのマジカルアドベンチャーより、

西村達也・山口真理作曲、『4STAGE 風の岩山』(仮称)。4面で流れます。

ディズニーのミッキーマウスを主役とするゲーム化作品としてスーファミ向けに登場した三部作の第1弾にあたる本作。崖に落ちて魔法界に迷い込んだミッキーは、悪の支配者・ピート皇帝に連れ去られた親友のプルートを救うべく冒険することになる。全6面構成でライフ制の横スクロールアクションで、魔法界という舞台設定を活かして自機のミッキーはコスチュームを替えて変身することができる。コスチュームは3種あり、魔法の溜め撃ちや絨毯などを使いこなせるウィザード、放水による消火やブロック移動を得意とするファイアーマン、フックで足場を上り下りしたり物を引き寄せたりできるクライマーから成る。ステージ構成やギミックはこれらのコスチュームの個性が発揮できるよう丁寧に練られていて、様々な能力を駆使して攻略していく醍醐味を味わえる。キャラの動きや仕草など全体的にメルヘンチックな雰囲気が漂っているが、アクション部分に関してはアスレチックな飛び移りやタイミングの見極め、ボスの対処法など適度に歯応えのある要素が揃っている。総じてディズニーの世界観に浸りつつ骨太なアクションを楽しめる仕上がりとなっている。後に追加要素を含んでGBA向けにアレンジ移植された。

本作の音楽を担当するのは西村達也氏と山口真理氏。スタッフロールでは西村氏はANIE、山口氏はMARI名義でクレジットされている。いずれも当時カプコンに所属していた作曲家である。両名とも担当作品は主に90年代前半のスーファミ向け作品に集中していて、西村氏は効果音制作を手がけることが多い。本作の作風は一見ポップだが洋物を意識した独自の重さとおっかなさがあり、同時期に発売された超魔界村(作曲は山口氏)に通ずる雰囲気がある。そのため、音楽の方向性も似ているところがあり、剽軽さと荘厳さを兼ね備えたパワフルなオーケストラサウンドが揃っている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

4面の風の岩山で流れるのがこの曲である。全3エリアから成る山岳地帯で、開始時に仲間のグーフィーからクライマーのコスチュームを受け取り、コスチューム固有のフックアクションを活用しながら攻略することになる。ステージは横方向だけでなく縦に広がる構成で、ときに強風に晒されながら縦横無尽に突き進んでいく。そうしたなか、初めはゆったり優雅にストリングスが響き渡るが、9秒から吹奏楽器が加わると一気に追い風を纏って勢いづく。主旋律を担うフルートは風のように気ままで、伴奏を担うブラスは岩のように分厚く泰然とした印象があり、そこにストリングスが絶えず寄り添うことでバランスの良い聴き心地を保っている。1分ほど似通った調子で楽しく合奏した後、1分9秒でトランペットが朗々と吼えるのを機に曲調に変化が表れる。1分15秒以降にはストリングスの見せ場が大々的に設けられていて、1分17~18秒で束の間だけバイオリンの弦を指ではじくピチカート奏法を取り入れて興を添える。その後まもなくブラスが合流すると、やがて馴染みのフレーズに戻って再始動する。とても瑞々しく威勢の良い一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。個人的に特に好きなのは1分9~15秒で一番低い音域でブラスが辛抱強くミの音を奏で続けるところです。