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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1508 『Outer Castle』(David Wise/Wizards & Warriors/NES)

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レアがおくるアクション・Wizards & Warriors(伝説の騎士エルロンド)より、

David Wise作曲、『Outer Castle』(仮称)。6面などで流れます。

後にスーパードンキーコングシリーズで知られることになるレアの初期の作品であり、日本国内では「伝説の騎士エルロンド」という題で登場した本作。深い森と洞窟と城を擁するElrond王国を舞台に、かつては高名だったが邪道に落ちた悪の魔術師・Malkilが姫と六人の乙女をさらったことを受け、勇敢で屈強な騎士・Kurosが巨悪に立ち向かうことになる。全7面構成、ライフと残機制を備えた2D横スクロールアクションで、道中に散らばる宝石を一定数集めることで各ステージのボスに挑むことができる。宝石を集めるにあたって、ステージ内に配置された鍵を探し回り、鍵に応じた宝箱や扉を開錠してアイテムを入手したり先に進む道を切り拓いたりする必要があり、全体的に探索要素が強い。初期装備は剣のみだが、道中で取得することで盾やダガー、杖などが使えるようになるほか、浮遊の薬や卵爆弾をはじめとする補助アイテム、さらにはキックで攻撃もできるし宝箱や扉も蹴破れるブーツなども存在する。自機の操作にはすこし慣性が利いているが、たとえミスしてもその場で無限コンティニュー可能な設計と相まって一定の遊びやすさが担保されている。海外産のオーソドックスな中世ファンタジーものとして手堅くまとまった仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはDavid Wise氏。当時レアに所属していた作曲家である。80年代後半から活動し続けている氏にとって本作は最初期の担当作品であり、当時のレア社唯一のサウンドスタッフとして音響全般を一手に担っている。本作では中世の重く暗い空気感を捉えた低音主体のシリアスな楽曲が多く、高音を取り入れる際にも悲壮的な響きが色濃く帯びているなど、徹底した雰囲気づくりが窺える。ステージごとに加えて、ピンチ時や無敵時にも専用曲が設けられていて、特に無敵BGMは他とは一線を画する快活さがあってうまくメリハリをつけている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

6面で流れるのがこの曲である。6面は城の外を舞台としたステージで、いよいよ終盤に差し掛かる場面である。なお、この曲は各ステージのボス撃破後に挿入される人質救出イベント(幕間のリザルト画面のような演出)の際にも流れるため、6面に到達する前に何度かイントロ部分を聴くことになる。そうしたなか、最初の4小節だけ、高音域で隣り合う音階を交互に反復する象徴的なフレーズが入るが、以降はしばらく息を潜めて素朴なワルツ風の曲調を紡いでいく。耳馴染みしやすいリズムで勇ましく頼もしい旋律を奏でるなかでも、決して先行きを楽観できないような手強い緊張感が漂っている。18秒から再び高音フレーズが挿入されると、今回も4小節だけで息を潜め、気付いたときにはすでにループに突入している。尺は短いが非常に魅せてくれるという点で、タイトル画面の曲に次ぐ第二のメインテーマと言えるような印象を与える。ヒロイックでストイックな一曲である。

タイトル画面(兼エンディング)と無敵BGMもあわせてどうぞ。どちらも比較的短いですがよく耳に残ります。

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