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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#986 『Jurassic Beach』(Brian Coburn・Magyari András・Spencer N. Nilsen/Ecco the Dolphin/MD)

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NovotradeがおくるアクションアドベンチャーEcco the Dolphinより、

Brian Coburn・Magyari András・Spencer N. Nilsen作曲、『Jurassic Beach』(仮称)。

Jurassic Beachで流れます。

ハンガリーの開発会社・Novotradeの代表作にあたる本作。突然の竜巻で散り散りになった仲間たちを捜すべく、イルカの主人公・Eccoは大海原を旅することになる。サイドビュー型のアクションアドベンチャーで、非常に滑らかで美麗なグラフィックと、イルカらしさを追求した独特な操作感が特徴である。マップを探索して海洋生物たちと会話しながら情報を集め、ギミックの謎解きをしつつ進めていくことになるが、ヒントは全体的にすくなめ、精密な動きを要求される場面が多く、海中では呼吸ができないため定期的な息継ぎが必要になるなど、かなり歯応えのある難易度を誇る。ネイチャーものを思わせて実は濃厚なSFの世界観に仕上がっているなど、独創的なセンスのある出来栄えとなっている。後にメガCDに移植されたほか、セガ3D復刻プロジェクトの一環として立体視や無敵モードなどに対応した3DS版が登場した。

本作の音楽を担当するのはBrian Coburn氏、Magyari András氏、Spencer N. Nilsen氏。Coburn氏とNilsen氏は発売元であるセガSega of America)に当時所属していたアメリカ出身の作曲家で、Magyari氏はNovotradeに所属していたハンガリー出身の作曲家である。本作では味のある作風に合わせてアンビエントやサイケ系の奇妙に没入感あふれる音楽が揃っている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

全26面中の17番目のステージであるJurassic Beachで流れるのがこの曲である。一つ前のステージでタイムトラベルして恐竜の時代に遡り、ここでは上空にプテラノドンが出現する太古の海を散策することになる。うねるような効果音で始まり、木琴風の小刻みな音色を軸に、口笛のような電子音やシンセ化されたハープシコードの旋律が響き渡る。曲調に変化がないまま淡々とミニマリスティックなフレーズを奏で続け、起伏の乏しさがかえって緊張感を絶えず刺激する。いよいよ終盤戦に差し掛かる状況下、未知なる原始時代の雰囲気を1ループ40秒足らずの尺で余すことなく表現した一曲である。

楽曲はいずれもPink Floydからすごく影響を受けているようで、FM音源の響きとよく馴染んでますね。一応補足ですが、ハンガリーでは日本と同じで姓・名の順で綴るので、Magyariさんのみそれに合わせてます(スタッフロールでもそうなっています)。ちなみにセガCD版のアレンジは尺がかなり伸びて神秘感が増した、これまた素晴らしい雰囲気の良アレンジ(編曲者はNilsenさん)です。あわせてどうぞ。

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