河村知之作曲、『MOONLIGHT GARDEN』。リサのテーマとして流れます。
バーチャロンの開発で知られるセガAM3研による新作として登場した本作。199X年、ストリートの若者たちが引き起こした第1次東京抗争はSOUL CREWの活躍により終結するも、そのボスが殺害されたことで均衡は崩れ、第2次東京抗争の火蓋が切って落とされることになる。武器あり・ラウンド制の3D対戦格闘ゲームで、架空ながらも実在感のある世界観が特徴である。プレイアブルキャラは8人、地元のライダーや遊び人、バンドマンなど、現実寄りだが強烈な人物像が揃っていて、世相や流行を反映したファッションと得物を身に着けている点が目を引く。操作体系は8方向レバーにパンチ・キック・ガードの3ボタン制で、本作ならではの要素としてアタックキャンセルが大々的に取り入れられている点が挙げられる。うまく使いこなせばどの技からも動きを中断して硬直を軽減し、素早く技を連携させられるため、激しく目まぐるしい攻防を繰り広げることができる。また、3ボタン同時押しで相手の懐に潜り込み、上・中段や投げ技を回避して急接近するテクニックが存在する。対戦バランスに関してはキャラごとの性能差に上述の目まぐるしさが加わって偏りが出やすく、対人のみならず対CPUも厳しめの難度に設定されている。総じて駆け引きのスピード感と世界観のセンスが光る仕上がりとなっている。後にセガサターン、PC、PS2に移植された。
本作の音楽を担当するのは河村知之氏。当時セガに所属していた作曲家である。格闘ゲームという括りだと本作以前にダークエッジを担当したことがあるが、担当作品の大半はセガラリーシリーズをはじめとするAM3研開発のレースゲームである。本作ではレースに通ずる疾走感とドライブ感のある洒落たサウンドが取り揃えられている。キャラごとにホームグラウンドとなるステージがあり、そのキャラの個性とステージの雰囲気を捉えたテーマ曲が用意されている。オルガンやギターを用いたロックやフュージョン系の曲調を中心に、作中で再現される東京の街並みにフィットする楽曲群を楽しむことができる。サウンドトラックについては、各曲のオリジナル音源とクラブリミックスを繋げたメドレーを収録したものが存在する。
リサのテーマとして、彼女のステージである「MOONLIGHT GARDEN」で流れるのがこの曲である。本名は草波リサ、日米ハーフでバンドのドラム担当の女子高生である。わがままなコギャルだが、祖父の営む武術道場の師範代でもあり、ドラムスティックを模した武器で戦う。ステージは夜の竹芝客船ターミナルの広場をモチーフにしている。そうしたなか、出だしからドラム、ギター、フィンガースナップ、ビブラフォン、女声を巧みに絡み合わせて生意気なほどスタイリッシュな印象を生み出す。10秒から滑らかなピアノ音が加わると、ますますジャジーでトレンディーな雰囲気が強まって、夜の埠頭で華麗に大立ち回りを演じるさまを鮮やかに彩る。30秒過ぎにはピアノはもちろん、チューバと思しき低音の管楽器による即興風のフレーズが奏でられ、41秒からビブラフォンが合流すると惚れ惚れする小気味良さを感じさせる。聴いているとスカッとする一曲である。
艶めかしくて粋、略して生意気、とでも言えそうな雰囲気が漂ってますね。