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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1510 『Turbulence』(竹田隼大・中村雅人/SCARLET NEXUS/PS4・PS5・XOne・XX|S)

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バンダイナムコがおくるブレインパンク・アクションRPG、スカーレットネクサスより、

竹田隼大・中村雅人作曲、『Turbulence』。ナギとの決戦で流れます。

バンダイナムコとトーセによる共同開発の完全新作として登場した本作。生物の脳を捕食する怪異が蔓延り、その対抗手段として超脳力が発達した世界・ニューヒムカを舞台に、怪異討伐軍の新入隊員である二人の念力使い・ユイトとカサネは、任務を通じてやがて世界の真実と成すべき使命を知ることになる。近未来×平成レトロ風でアニメチックなSF異能ファンタジーの世界観が印象的なアクションRPGである。開始時にいずれかの主人公を選択してその視点から物語を進めていく。片方でのみ語られる事情や描写はあれど、どちらを選んでも物語の大筋や着地点は共通している。肝となる超脳力アクションに関しては、手元の武器とフィールドのオブジェクトを操って投げつけたり振り回したりする念力を軸に、直感的で豪快な攻防を繰り広げることができる。主人公別に行動を共にする仲間が異なり、放電や瞬間移動など多彩な脳力を組み合わせて共闘する感覚を味わえる。また、仲間との交流要素としてエピソード仕立ての絆ストーリーが用意されている。シナリオやバトルは勢い重視でいくらか大味だが、なべて安定した水準でJRPGらしさが詰まった仕上がりとなっている。一日遅れでSteamにも登場した。

本作の音楽を担当するのは竹田隼大氏。スタッフロールに記載はないが中村雅人氏も携わっている。いずれもトーセに所属する作曲家である。このうち竹田氏がメインコンポーザーであり、中村氏はサウンドプログラムや社内ディレクションを中心としつつ若干数作曲を手がけたようである。本作の音楽はアーバンでサイバーなサウンドを軸に、近未来感のあるノイズやグリッチ、翻って懐古的な響きを帯びたサックスなどをうまく散りばめている。フィールドの探索時と戦闘時で曲がシームレスに変化したり、戦闘中でドライヴと呼ばれる一定時間の強化モードに入ると音程とリズムが上がってテンションが高まったりする工夫がみられる。サウンドトラックについては、限定盤に一部楽曲を厳選収録したデジタル盤が付属されたほか、後になって2枚組で網羅的に収録したものが各種デジタルストアで配信された。

ナギとの決戦で流れるのがこの曲である。ナギは主人公のユイトの親友で、お調子者だが根は真面目で憎めないところがある気さくな少年である。初めは友好的だが徐々に言動がおかしくなって対立し、物語の転換点と言える重要な役回りを演じることになる。そうしたなか、張り詰めたピアノイントロから始まり、5秒からストリングスとパーカッションが加わると急激に盛り上がる。17秒でエレキギターが掻き鳴らされると、続けて畳みかけるように切迫したコーラスが聴こえ出し、いよいよ後戻りできない悲壮かつ熾烈なムードが強まっていく。40~48秒でギター、直後にピアノ、51秒からコーラスとストリングスとギターの見せ場を相次いで持ってくることで、息つく暇もなく最高風速で駆け抜けていく。1分過ぎでしっとりとしたピアノパートが入るが、1分12秒で再び急激に勢いづいて一直線でサビに向かうと、1分22秒から暴風の如くギターとストリングスが荒れ狂う。サビの迫力は凄まじいが、なかでも終盤の1分40秒からギター→ピアノソロ→ストリングスと繋げていくくだりはとびきりの格好良さを誇る。サビが終わった後はギターが即興風の演奏を披露し、2分7秒になると吼え猛るような荒ぶりをみせる。葛藤のなかでもがき、苦しみ、引き裂き、掻き毟る、そんな悲痛な覚悟が伝わってくる一曲である。

曲名は乱気流という意味で、凪から乱気流へ豹変する過程がよく表現されてますね。ナギ関連のイベント曲に『Whirlwind』(旋風)というアコースティックギター主体の曲と、戦闘後にそのアレンジの『凪の時』がかかるのですが、それもぜひ聴いていってください。

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