VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1511 『Wings of Steel』(米村高広/STEAM-HEART'S/PC98)

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戯画がおくるシューティング・スチームハーツより、

米村高広作曲、『Wings of Steel』。5面で流れます。

アダルトゲームブランドの戯画が開発した本作。ウイルスに侵されつつある惑星・ウェスティナを舞台に、先天的に抗体を持つ二人の獣人型有機ユニット・ブロゥとファラは、抗体を他の個体に分け与えて治療すべく奔走することになる。全7面構成でライフ制の成人向け縦スクロールシューティングで、幕間にお色気ビジュアルシーンが挿入される。パワーアップ可能な標準装備のバルカンとレーザーのほか、サブウェポンのミサイルなども用意されていて、システム面で目新しさはないが順当かつ豊富な攻撃手段を使い分けることができる。敵弾の密度はそこそこあるが、スクロール速度やゲームスピードはそう速くないうえに難易度が3段階設けられているため、腕前に応じて適度に対処しやすいバランスを保っている。キャラ描写とメカデザインにも注力していて、幕間のみならず道中でも顔グラフィック付きで会話が挟まれたり、ヒロインたちはそれぞれ強気だったり生意気だったりして彩り豊かに描かれている。総じて並の水準でまとまった仕上がりとなっている。後にPCエンジンセガサターンに移植された。

本作の音楽を担当するのは米村高広氏。CHEMOOL名義や快人Rauch名義でも知られるフリーランスの作曲家である。自ら運営する同人サークル・Firecrackerを本拠として、90年代から主にPCアダルトゲームの分野で活動している。戯画の作品には本作以前にもV.G.に携わったことがあり、本作においては内蔵のFM音源バージョンの楽曲と効果音制作を担当している。なお、MIDI音源バージョンは度会達也氏が手がけている。本作ではいかにもシューティングらしいSF風のスピーディーでメタリックなサウンドを中心に各種取り揃えられていて、移植版ではそれぞれ音源違いのアレンジが施されている。サウンドトラックにはボイス集や未使用曲なども含めて収録されている。

5面で流れるのがこの曲である。荒れた渓谷を舞台とするステージで、立ちはだかるボス(ヒロイン)は堅物で達観したようなところがある。ゲーム後半から終盤に突入しつつあるシチュエーションにあわせて、この曲は非常に牽引力のあるキャッチーなチューンに仕上がっている。冒頭から惜しみなくギラギラと鳴らす音色が印象的で、曲全体を通してクライマックスらしい派手な勢いと力強さがみなぎっている。10秒から入る主旋律は情熱的だがかすかにペーソスを纏っていて、32秒で高音が目立つようになるといっそう気持ち良い伸びを見せつつ泣きメロっぽさが強調される。そのまましばらく威勢よく疾駆した後、51秒で同じ音程を連続で鳴らして急ブレーキをかけると、やがてフレーズ終結に向けて綺麗に収束していく。54秒で主旋律の最後の音色を長く引き伸ばすと、すかさず副旋律にバトンを託して勢いを殺すことなく1分5秒のループ部分へと向かっていく。揺るぎない頑強さと機敏さに満ちた一曲である。

この曲は格好良くて好きですが家庭用機版では別曲に差し替えられているようですね。