山岡昇・山根ミチル作曲、『パスワード』(仮称)。パスワード画面で流れます。
ロケットを背負ったフクロネズミの騎士道物語を描くロケットナイトアドベンチャーズの続編にあたる本作。騎士と魔法と機械が共存する異世界・エレホーンを舞台に、邪悪な魔術によって台頭した魔道国家ゲドルの差し金でさらわれてしまったチェリー姫を救出すべく、スパークスターが単身立ち向かうことになる。全6面構成の横スクロールアクションで、前作でみられたギミックの多彩さを受け継ぎつつ、本作ではスピード感を重視したゲーム性にシフトしている。高速突進を繰り出すロケットアクションは、前作ではアタックボタンと兼用でいざというときに溜め押しで使用するものだったが、本作では専用のボタンに割り当てられ、より手っ取り早くより汎用的に使用する立ち位置に変更された。それに伴って突進を応用した壁蹴りやスイッチの押し込みなどの動作や仕掛けが多く追加され、全体的なステージデザインはロケットアクションを積極的に活用することを前提としたつくりに調整された。通常のステージのほかに巨大ロボで戦うシーンもあり、色鮮やかでメリハリのある展開を楽しむことができる。操作は慣れを要するもので、スピーディーであるがゆえに手こずりかねない難易度を持つ。前作から方向転換しつつ小気味良くまとまった仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは山岡昇氏と山根ミチル氏。スタッフロールではSOUND DESIGN欄にてそれぞれA. YAMAOKAとCHIRUCHIRU YAMANEという名義でクレジットされている。なお、同時期に本作と同名でスーファミ向けにも発売されている(単純な移植ではないため、内容も音楽も異なる)が、両名ともそちらにも携わっている。このうち山根氏は前作に引き続きシリーズに参加している。メタリックでエネルギッシュなサウンドを中心に、ところどころ剣と魔法の世界観らしいクラシカルでヒロイックなファンタジー風の色合いも感じられる。サウンドトラックは未発売で、作中にはサウンドテスト機能が存在するものの番号表記のみのため、曲名は便宜上の仮称とする。
パスワード画面で流れるのがこの曲である。本作では、ゲームオーバー時にパスワードを控えておくと、次に遊ぶときにそれを入力して再挑戦できる仕組みのコンティニュー方式を採用している。パスワードは文字ではなく、絵札の種類と色を選択して組み合わせるものである。そうしたなか、イントロの第一音からジャンジャン鳴る派手な音色で、一見激しいけれどアップテンポというにはゆったりした速度でじわじわと盛り上げる。6秒頃で本格的にドラムが参戦すると、四つ打ち+αの心地良いビートを刻んでノリを整える。16秒から主旋律が入ると、しっかりと支えるドラムパターンの上を揺蕩うようにして、リバーブがかかったようなスペーシーな音色が奏でられる。音色そのものはギラギラした響きを帯びているが、全体の聴き心地はメニューBGMにふさわしい落ち着きを湛えていて、双方の性質が融合することで絶妙な味わいを生み出している。よく耳に残る一曲である。
ちなみにスーファミのパスワード画面の曲は、伴奏がざわざわしている点はよく似ているし、メロディーも割と近いですが、綺麗な笛の音を用いた長閑な室内楽クラシックみたいな雰囲気で、まるきり印象は別物です。聴き比べてみてください。