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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1335 『永遠の銀』(kemu/Caligula2/NS・PS4)

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フリューがおくる学園ジュブナイルRPGカリギュラより、

kemu作曲、2の『永遠の銀』(リグレット歌唱ver)。マキナのテーマとして流れます。

心に闇を抱えたキャラが織り成す仮想世界×ボカロP×学園モノで知られるカリギュラシリーズのナンバリング2作目にあたる本作。前作の事件から5年後、謎のバーチャドール・リグレットに導かれるままに人生のやり直しを実現できる仮想世界・リドゥに誘われた主人公は、境遇を同じくする仲間たちとともに本物の現実に向き合うべく戦うことになる。世界観や時系列上は前作の続き物だが、舞台となる仮想世界や登場人物はほぼ一新されている。キャラの大半は世間一般の認識として前作の事件のあらましは聞き及んでいるが、詳細は知らない体で進むため、前提知識がなくてもある程度は話を追いやすい仕組みになっている。現代病理と若者文化を織り交ぜた刺激的な作風、敵味方ともに情緒豊かなキャラ、行動予測が表示されるシミュレーション風のコマンドバトルなど、大まかなゲーム性は前作を踏襲している。本作では新たに戦闘関連で、仲間の行動をオートに設定できるようになったほか、条件を満たすことで味方全体に恩恵を与える歌を流せるフロアージャックという要素が加わった。探索や交流面では、因果系譜で可視化される人物相関図や、単発のほかに人から人へと連鎖するグループクエストなど、人間関係に重きを置く各種システムがブラッシュアップされた。前作より遊びやすく洗練された仕上がりとなっている。後にPCに移植された。

本作の音楽のうち、インストゥルメンタルのものおよび効果音は増子津可燦氏が担当している。フリーランスの作曲家で、カリギュラシリーズには前作に引き続き携わっている。ボーカル曲(=主に楽士と呼ばれる敵キャラに紐づくもので、その楽士が管轄するマップにおける通常戦闘曲の役割を果たす)に関しては前作同様に著名なボカロPを起用している。具体的にはAyase氏、cosMo@暴走P、kemu(堀江晶太)氏、Neru氏、sasakure.UK氏、かいりきベア氏、ツミキ氏、ぬゆり氏、ポリスピカデリー氏がそれぞれキャラの個性や心情に寄り添う楽曲を書き下ろしている。また、ボス戦用のリミックスはTeddyLoid氏が手がけている。歌には敵側のリグレット(CV:香里有佐氏)が歌唱するバージョン、フロアージャック時に味方側のキィ(CV:峯田茉優氏)が歌唱するバージョンが用意されている。シリーズの目玉要素らしく本作でも相変わらず音楽に注ぐ熱量が高く、戦闘中に背景で歌詞が映し出されるミュージックビデオ風の演出も特筆に値する。サウンドトラックは4枚組でボーカル曲・インスト曲ともに収録されている。

マキナのテーマとして、彼が管轄する駅構内の通常戦闘で流れるのがこの曲である。マキナは機械の身体を持ち、カタカナのロボット口調で淡々と命令に従う楽士である。駅構内は物語開始直後に訪れるため、この曲の立ち位置は最序盤の通常戦闘曲と言える。流麗なピアノイントロで始まり、5秒からゴス系の昏く大仰なコーラスが加わると一気に激しさが増す。歌が入る頃には一旦沈んだ調子に戻り、ピアノをバックに切羽詰まった響きを帯びた歌声を披露する。33秒の「参列者は笑い行く/虚ろな棺」を筆頭に、歌詞は全体的にどこか気取ったような雰囲気を纏っているが、かと思えば45秒で「嫌だよ」と急に平易な言葉を吐いて、心の荒れ模様を如実に描き出している。サビの「息を止めてそのままで命よ銀に光れ」というフレーズは、歌い方の切実さ、詩的な言い回しながらも内なる願いを言語化した歌詞、そして後ろで激しく躍動する伴奏、そのすべてが見事に噛み合うことで猛烈な悲壮感を生み出している。サビの主張が非常に強力だが、他の箇所にも見せ場が点在している。1分53秒から焦って被せるようにつぶやく様子や、二番目のサビ終わりから入れ替わるようにして2分40秒から無心に反省文を音読する様子など、捻りの利いたパートがすくなくない。そのうえでやはりサビが最も強く、儚く、思いが集約されている点が印象深い。虚勢と本音の間で揺れる心をよく表現した一曲である。

素晴らしいですね。ボス戦の『永遠の銀 (Remix)』は歪み具合がいいですし、キィ歌唱verはアイマスのやよい鳥が頭によぎる。あわせてどうぞ。

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