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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1325 『隔世のゆらめき』(桜庭統/ヴァルキリープロファイル2 -シルメリア-/PS2)

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トライエースがおくるRPGヴァルキリープロファイルより、

桜庭統作曲、2の『隔世のゆらめき』。精霊の森で流れます。

北欧神話ベースの世界で戦乙女の生き様を描くヴァルキリープロファイルシリーズの2作目にあたる本作。前作のレナスの物語から遡ること数百年前を舞台に、人間の王女・アリーシャは、その身にヴァルキリー三姉妹の末子・シルメリアの意識を宿すがために、人と神の狭間にあって過酷な運命に挑むことになる。ハードの移行に伴ってグラフィックは2Dから3Dになり、前作の美麗な画作りを受け継ぐ形で高い水準で表現されている。シミュレーション的な切り口で神界側の物語を描いていた前作とは異なり、本作は人間を主人公として一本道の物語を進めるスタンダードなRPG形式に変更された。代わりに戦闘システムのほうで新たに移動や部位破壊の概念が導入されたことで、シミュレーション風の戦略性が組み込まれるようになった。また、キャラごとに単純に装備を整えるだけでなく、装備品に付くルーンの組み合わせによってスキル習得に繋がるなど、育成要素やカスタマイズ性の奥深さが増した。シナリオ面では悲劇と策謀を描くなかでやや強引さが目立つほか、仲間となるサブキャラのエインフェリアたちに関しては前作と比べて掘り下げ描写が縮小されるなど、前作の前日譚を謳いつつも毛色が異なる。全体的に作風が変わった仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは桜庭統氏。フリーランスの作曲家で、ヴァルキリープロファイルシリーズはもとより、トライエース作品群には数多く携わっていることで馴染み深い。本作では音楽面でも作風の変化がみられ、前作のロックやプログレ系を軸としたパワフルな曲調から、よりファンタジー色を強めた物悲しいオーケストラサウンドを中心としたアプローチへと変わった。戦闘曲はオーケストラを取り入れつつも従来の音楽性に通ずるエネルギッシュな響きを帯びていて、一見アプローチが変わってもシリーズの色は残っているように感じられる。サウンドトラックは各2枚組でVol.1とVol.2に分かれて発売されているほか、選りすぐりの一部楽曲をセルフアレンジしたアルバムも存在する。

精霊の森で流れるのがこの曲である。人間界において唯一エルフたちが暮らす場所で、神界に続く門があるという。そうした幽趣に富んだ空間を彩るにあたって、リュートとハープの組み合わせによって即座に引き込まれるような、どこか遠くへ魂ごと連れ去られてしまいそうな響きを生み出す。13秒でバグパイプの音色が束の間だけ響くが、主旋律を担うのは19秒から入る笛の音で、バグパイプはしばらく息を潜めることになる。43秒で再び合流する暁には、バックに女声コーラスが付き添っていて、ますます神秘的な色合いに磨きがかかる。1分20秒でサビに到達すると、バグパイプの特徴的な音色を駆使してよく耳に残る旋律を奏でるが、まだひとしきりフレーズが完結してなさそうな、後半に続きがありそうな段階で、1分32秒には早くも間奏に移る。そのまま聴き進めていると、そう代わり映えしないが相変わらず美しい曲調を維持し続ける。そして満を持して二度目のサビが2分20秒過ぎから始まると、今回は2分32秒以降にフレーズの後半部分が追加されていて、ハープとコーラスの情緒あふれる演奏をたっぷり堪能させてくれる。心を奪われる一曲である。

どう説明したものか、バグパイプにしろサビの後半にしろ、あえて間隔を置くことで時間差で美しさが押し寄せてくる感じがすごく好きです。