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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1103 『Captured phantom』(桜庭統/トラスティベル ~ショパンの夢~/X360)

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トライクレッシェンドがおくる新感覚クロニクルRPGトラスティベルより、

桜庭統作曲、『Captured phantom』。月の街エレジーで流れます。

トライクレッシェンドの初の単独開発作品にあたる本作。早逝の音楽家ショパンが今際の際に見た夢の世界を舞台に、不治の病の者にしか扱えぬという魔法の力を宿した少年少女との出会いを通じて命の輝きを知ることになる。実在のピアニストをモチーフにした独創的なファンタジーの世界観が特徴である。戦闘システムはキャラの順番が回るたびに一定の行動時間が与えられるセミリアルタイム型のターン制で、スティックでの移動や防御のタイミング合わせなどのアクション要素に加え、キャラの立ち位置が日なたか日陰かによって味方なら必殺技が、敵ならステータスが変わるといった地形絡みの戦略要素も含まれる。また、夢を題材としているからか、独特で捉えどころのない台詞回しや展開が散見され、その斬新な作風と奥深い戦闘が印象的な仕上がりとなっている。後に新キャラの追加やシナリオのテコ入れなどを施した完全版がPS3に登場した。

本作の音楽を担当するのは桜庭統氏。フリーランスの作曲家で、トライクレッシェンド製の作品にはバテンカイトスシリーズを筆頭に頻繁に関わっている(トライクレッシェンドの設立者である初芝弘也氏とはウルフチーム時代から馴染みがある)。本作ではショパンを扱っていることから音楽面のこだわりも強く、ピアノやオーケストラを軸とした壮大ですこし切ないシンフォニックサウンドが揃っている。また、幻想即興曲夜想曲をはじめとするショパンの楽曲について、ロシア出身のピアニスト・Stanislav Bunin氏が生演奏している。サウンドトラックは主題歌やBunin氏の演奏も含めて4枚組で収録されている。

月の街エレジーで流れるのがこの曲である。物語終盤に訪れる常闇の街で、住民はみな肉体がなく魂の姿でさまよっている。かといっておどろおどろしいわけではなく、神秘的な色彩の街並みと相まってとても幻想的な雰囲気を漂わせている。そうした心奪われる光景を彩るにあたって、はじめはピアノとギターの静かな前奏で惹きつけ、17秒でバイオリンが加わることで、その高く澄んだ響きが夢見心地の没入感を生む。34秒でバイオリンに代わってハープが甘美な間奏を紡ぐと、似たフレーズを繰り返しながら勢いを蓄えていく。51秒にはバイオリンが戻るとともにハープも引き続き健在で、物悲しくも恍惚な旋律を奏でる。サビ直前で束の間だけピアノソロが入ると、続く1分17秒からの高音が非常に美しく映える。その後もピアノソロを挟みつつ、2分以降は伴奏のギターの存在感を強めながらバイオリンが艶やかに響き渡る。夢幻のごとく儚く麗しい一曲である。

とても素敵な雰囲気ですね。バイオリンが綺麗なのはもちろん、伴奏との兼ね合いが良くて聴き心地抜群です。