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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#820 『Rain』(伊藤賢治/おおかみかくし/PSP)

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コナミがおくるミステリーアドベンチャーノベル・おおかみかくしより、

伊藤賢治作曲、『Rain』。タイトル画面で流れます。

ひぐらしのなく頃にで知られるシナリオライター竜騎士07氏が原案と監督を務める新作アドベンチャーとして登場した本作。昭和58年の夏、河川を隔てて新市街と旧市街に分かれる山間の新興住宅地・嫦娥町に引っ越してきた高校生の少年・九澄博士は、なぜか周りから異様に持て囃されるなか、旧市街の謎と恐怖に巻き込まれていくことになる。怪しげな都市伝説と猟奇殺人が蔓延る、暗く、重く、伝奇的な世界観が特徴で、複数の章を読み進めていくことでやがて真相が明かされる形式を取っている。総じて陰鬱で狂気的な作風が徹底された仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは伊藤賢治氏。フリーランスの作曲家で、原案・監督の竜騎士07氏、キャラクターデザインのPEACH-PIT共々、本作の目玉要素である豪華スタッフの一員として伊藤氏がオープニングを除き全曲単独で作曲している。本作では日常シーンに似つかわしい軽やかで和やかな曲調のものから、一転して鬱屈とした雰囲気を漂わせる重苦しい曲調のものまで、ピアノやバイオリンをふんだんに用いたクラシカルでノスタルジックなサウンドが勢揃いしている。サウンドトラックは主題歌も含めて収録されている。

タイトル画面で流れるのがこの曲である。夜空に大きな満月が浮かぶ、シンプルながらも見栄えのする映像を、ピアノの淑やかな調べとバイオリンの切なげな旋律でどこまでも叙情的に彩ってくれる。小刻みに震えるように響くビブラートを利かせながら紡がれる弦の高音は、哀愁を通り越して悲痛さを滲ませていて、穏やかに寄り添うピアノとギターの伴奏と相まって、行き場のない憂いを湛えている。曲終盤、1分30秒を過ぎたあたりで、あえて音の数をぐっと減らすことで、ピアノとバイオリンを最大限に引き立たせ、迫るアウトロに向けて有終の美を飾る。『Rain (piano arrange)』、『Rain (ORGEL)』、バイオリンソロの『Herbstdusche』各種、ボーカル版(ヒロインを演じる伊瀬茉莉也氏による)の『夕時雨』など、アレンジの豊富さからしても、まさに本作の代表曲と言える一曲である。

『夕時雨』の出だしの、雨に打たれて、という歌詞がすごく好きです。もともとバラード風なので、ボーカルとの相性が抜群ですね。あわせてお聴きください。

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