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#885 『Lost Techno(戦闘)』(伊藤賢治/カルドセプト セカンド/DC)

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大宮ソフトがおくるトレーディングカードボードゲームカルドセプトより、

伊藤賢治作曲、セカンドの『Lost Techno(戦闘)』。錬金術師の館での戦闘で流れます。

上記動画の58:29から59:45まで。

ボードゲームとカードゲームを組み合わせたカルドセプトシリーズのナンバリング2作目にあたる本作。カードからクリーチャーを召喚し、人智を越えた魔法を発揮できるカルドセプトの力を悪用し、全宇宙を掌中に治めんとする邪悪な者に立ち向かうべく、主人公はカード使いのセプターとして戦うことになる。基本的なゲーム性はそのままに、カードの種類が大幅に増加したのはもちろん、砦ボーナスが追加され、領地能力や複属性地形も実装、さらには複数のセプターとチームを組んで共闘する同盟戦が導入された。システムやグラフィックの刷新に加え、特筆すべきはオンライン対戦が可能だった点で、ネットワークを介して全国の腕自慢と実力を競うことができた(サービス終了済み)。当時としてはまだ珍しい通信対戦を取り入れ、シリーズの礎を築いた意欲作に仕上がっている。後に新要素を追加してPS2に移植された。

本作の音楽を担当するのは伊藤賢治氏。本作発売の半年ほど前にスクウェアを退社したばかりのフリーランスの作曲家で、本作は独立後初めての担当作品である。前作は古代祐三氏と柳川剛氏のタッグが作曲していたが、本作以降のシリーズでは伊藤氏が引き継いでいて、もともと良曲揃いとされていた音楽の評価を盤石なものとする。本作ではオーケストラ調のファンタジーサウンドを中心に、ステージで流れる曲はそれぞれ前半・後半・戦闘に分かれていて、各ステージの3曲は、前作では曲名がばらばらだったが、本作からは曲名は共通(後ろに括弧で使用場面が付される)になった。サウンドトラックは未使用曲や一部楽曲のセルフアレンジ版なども含めて収録されている。

錬金術師の館の戦闘シーンで流れるのがこの曲である。このステージは同じ形状の長方形のマップが二つ独立して存在し、最初のステージ並みの狭さを誇る閉鎖的な空間である。ストーリー上の対戦相手は研究に心血を注ぐマッド錬金術師・モロックで、曲名も錬金術(失われた古代技術=ロストテクノロジー)を指すものと思われる。『Lost Techno(前半)』は煌びやかな鉄琴が印象的なミステリアスな曲で、ピアノの周期的な伴奏が独特な神秘を漂わせる一方、『(後半)』はその独特な神秘を継承しつつ、ストリングスとパーカッションでシリアスな空気感を生み出す。そして戦闘ともなるとピアノとドラムを主軸に据えたハイスピードなトランスに早変わりし、開始から20秒手前(58:45あたりから)で前半でも後半でも共通して用いられた鉄琴の高音が興を添える。心奪われるほど幻想的で、なおかつ引き締まった硬派な雰囲気を併せ持つ一曲である。

数あるイトケンさんの楽曲のなかでもとりわけ大好きな一曲です。鉄琴とピアノによるスタイリッシュなトランスなんて最高ではありませんか。前半と後半もあわせてどうぞ。

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