VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1326 『武蔵FC/武蔵中』(作曲者不明/キャプテン翼/MCD)

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高橋陽一著のサッカー漫画を原作とする、

テクモがおくるサッカーシミュレーション・キャプテン翼より、

作曲者不明、MCD版の『武蔵FC/武蔵中』(仮称、サウンドテストでは『BGM 15』)。

武蔵FC/武蔵中との試合で流れます。上記動画の16:35から17:34まで。

サッカー漫画「キャプテン翼」のゲーム化作品のうち、テクモ製の唯一のメガCD向けの作品にあたる本作。南葛サッカーチーム結成から全国中学サッカー大会まで、大空翼と彼の仲間やライバルたちが切磋琢磨することになる。プロローグとなる修哲小との試合を含む中学生編までの流れを、メガCDの容量を活かしてアニメ版(1983年第1作)の声優によるボイス付きで再現している点が特徴である。概ね原作準拠で物語を進めるシナリオモード、シナリオ中の試合を選んで遊べるめいしょうぶモード、好きなチームで対戦できる2Pたいせんモードの主に3つの遊びが収録されている。基本的なゲーム性はファミコン版ナンバリングを踏襲していて、色鮮やかで見映えのするビジュアルや、コマンド選択式シミュレーション型の試合展開は健在である。本作ではキャラのみならずドリブルやパスといった各行動にも経験値が入るようになり、レベルに応じて行動が強化されるため、全体的なゲームバランスとそれに伴うテンポ感がより遊びやすい方向へと調整された。より原作に沿った切り口で翼たちの活躍を追体験できる仕上がりとなっている。後にメガドライブミニ2に収録された。

本作にはスタッフロールは存在するが、声の出演のみ記載されているため、作曲担当を含む開発スタッフの具体的な内訳は判然としない。これまでのシリーズを踏まえると、おそらく本作のサウンドテクモ内製であると考えられる。ボイスに注力したからか、楽曲の多くはCDではない内蔵音源で鳴らしていて、ファミコンスーファミ版とはまた一味違う質感がある。サウンドトラックは未発売のため正式な曲名は不明だが、作中には恒例のサウンドテストがあり、そこでは曲名の代わりに通し番号が振られている。

武蔵FCおよび武蔵中のテーマとして試合中に流れるのがこの曲である。武蔵は三杉淳を核とするチームで、三杉は心臓病のためピッチに立てる時間が限られているが、純粋な技術も統率力も眉目も兼ね備えた優秀な選手である。重いハンデを抱えながら鮮やかな活躍ぶりをみせる様子を彩るにあたって、この曲は明るく清々しく乗りに乗った、非常に調子の良い曲に仕上がっている。イントロの2秒間ほどで徐々に音階を上がっていき、続いて煌びやかな伴奏を交えながら爽快極まる旋律を奏でることで、勝利に向かって邁進する感覚がよく伝わってくる。13秒(上記動画の16:48)あたりでドラムを高速に打ち鳴らして区切りをつけると、以降は明るい印象を引き継ぎつつ、スタイリッシュさが増して小粋な音色を紡ぐ。特に20秒(16:55)から一気に高音に遷移して伴奏ともども華麗な盛り上がりを披露するところは印象深く、全体的に明るく小粋な曲調であるなかでもシリアスなテンションがうまく融け込んでいる。曲の尺が短い分、清涼感がたっぷり凝縮された一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。武蔵の、というよりは三杉のテーマというイメージですね。