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#1119 『暗黒の翼』(豊田亜矢子/影牢~刻命館 真章~/PS)

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テクモがおくるトラップアクション・刻命館より、

豊田亜矢子作曲、影牢の『暗黒の翼』。第15話などで流れます。

侵入者を罠で嵌め殺す刻命館シリーズの2作目にあたる本作。刻人と呼ばれる不老不死の種族が人間を支配している国を舞台に、深い森の奥の城に住む人間の少女・ミレニアは、刻人の命令に従って人間狩りをすることになる。侵入者に対してトラップを仕掛けて排除するというコンセプトと、ひたすら殺戮に興じる残虐な世界観は前作から受け継いでいるが、前作にあった館の増築や、生け捕りにした人間を材料として合成するモンスター召喚といったリソース管理の色合いが強いシステムは軒並み廃止されている。代わりに本作では床のみならず天井と壁にも同時に罠を設置できるようになり、複数の罠を連鎖させるトラップコンボという新要素が追加されたことで、アクション性が強化された。以降のシリーズの基礎となるゲーム性が確立された仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは宇田川昌昭氏、豊田亜矢子氏、宮崎博氏。宇田川氏と宮崎氏は当時テクモに、豊田氏は現在も吸収合併を経てコーエーテクモに所属する作曲家である。いずれも前作では不参加だが、続編の蒼魔灯では引き続き作曲しているほか、豊田氏のみダークサイドプリンセスにも参加している。本作では非常に濃厚なダークファンタジー調の作風にあわせて、昏く重いオーケストラサウンドを中心とした楽曲群が揃えられている。サウンドトラックについては本作単体で収録したもののほか、ダークサイドプリンセスのプレミアムBOX同梱物としてそれまでのシリーズ楽曲を集めたサウンドセレクションが存在する。

第15話や第22話で流れるのがこの曲である。ぜんぶで26話あるため、物語後半のステージ曲という立ち位置である。太鼓と低音域の弦の音色によって一瞬にして物々しい雰囲気を整えるイントロで始まり、4秒からピアノ主旋律が入ると、その軽やかなメロディーを引き立てるようにコーラスや管弦楽器が追随する。無邪気に舞うように奏でられるピアノとは対照的に、伴奏は重厚そのもので、華やかだが底知れぬ不吉さを滲ませる。30秒以降はホルンやフルートが相次いで主旋律を担い、45秒からはブラスとコーラスが精いっぱい不穏な和音を披露する。その後、1分余りで継ぎ目なくループする。恐ろしくも引き込まれるような心地良い背徳感に満ちた一曲である。

シンバルなどの打楽器の使いどころがいいですね。しっくりくるタイミングで派手に鳴っていて、良い具合に厳めしさが出てます。ちなみに無双スターズに豊田さんのセルフアレンジがあって、そちらはエレキギターを使った鮮やかな出来です。『暗黒の翼 -Stars Mix-』(下記動画は10分延長版です)、あわせてどうぞ。

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