関西テレビのマスコットキャラを題材とする、
ナツメがおくるくちびるアクション・ハチエモンより、
藤村宣子・水谷郁・渡辺哲存作曲、『沼ステージ』(仮称)。沼ステージで流れます。
関西テレビのマスコットであるハチエモンを主役に据えた本作。ハチエモンと愉快な仲間たちが暮らす南の小島・ハチアイルを舞台に、くちびるを落としてしまった仲間たちのためにくちびる探しの冒険に出ることになる。22面+クリア後6面から成る2Dアクションで、ステージごとに指定の数のくちびるを集めてゴールに辿り着くことが目的である。本作最大の特徴兼チャームポイントはずばりくちびるを駆使したアクションで、伸縮自在の攻撃手段として敵に当てて恥ずかしさで動きを止めたり(一時的に足場にできる)、ブーメランのように投げて障害物の向こうにあるものを回収したり、壁にひっついて移動に役立てたりすることができる。さらにタコヤキを食べれば11種類の姿に変身可能で、泳ぐ、飛ぶ、体が小さくなるなど、多彩な能力を活かして道を切り拓いていく。また、道中でカンテーレ(関西テレビの愛称)と叫べば一瞬だけ隠されたギミックを可視化させられる。キャラに焦点を当てた作品らしく仕草や台詞回しの軽妙さが魅力的で、ハチエモンだけでなく立ちはだかるオバチャンや敵キャラ、背景の描き込み、ステージクリア時のスロット要素に至るまで愛嬌に満ちている。見た目やノリはおどけているが、アクションの手触りやステージ設計はしっかりツボを押さえていて、全体を通して良好な水準でまとめられた仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは藤村宣子氏、水谷郁氏、渡辺哲存氏。いずれも当時ナツメに所属していた作曲家である。スタッフロールでは三名とも「おんせい」という欄でクレジットされているため、それぞれの厳密な担当範囲(作曲なのか効果音なのかデータ制作なのか等)は定かではない。本作では同社のメダロットシリーズに通ずるような携帯機音源の持ち前の表現力を引き出したサウンドづくりを堪能できる。関西のイメージに沿ったエネルギッシュで人情味のあるメロディアスな楽曲が揃っていて、明るくウキウキしたもの、切なくも伸びやかなもの、ときには演歌風だったり三味線っぽい音色を取り入れたりして色鮮やかな雰囲気を醸し出している。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。
すてーじ12・13で流れるのがこの曲である。くちびるをなくしたワニさんの代わりに沼地を進むことになり、水上の動くいかだや空中のまばらな足場を使って探索していく。沼といっても薄暗さや淀みはなく、開放的な自然の景色に快晴の空が広がるため、ステージの雰囲気はとても明るい。そうした明るさをさらに印象付けるように、この曲は出だしからお気楽で上機嫌な響きを帯びている。親しみやすい主旋律を支えるように、5秒や8~11秒で軽快なアルペジオを披露していて、12秒以降には伴奏にラッパのような音色を交えることでますます賑やかな印象を生み出すようになる。終始楽天的な曲調を貫くなかでも、とりわけ34~46秒では剽軽な電子音にストリングスの高音を添えて程よくテンションを高めている点が印象深い。どこまでも清々しく、何が起きてもなんとかなるような自信が湧いてくる一曲である。
この飾らず自然体な清々しさが染みますね。海ステージも清々しく感動的な響きがあってええ感じなんであわせて聴きはってください。