タムソフトがおくるアクション・スチームギアマッシュより、
田辺文雄・中野恭宏・向井真作曲、『タイトル』(仮称)。タイトル画面で流れます。
タムソフトの最初期の作品としてセガサターン向けに登場した本作。天才発明家の千駄ヶ谷博士がつくった蒸気機関生命体・マッシュは、悪の帝王・ガッシュにさらわれた博士の孫娘のミーナちゃんを取り戻すべく奮闘することになる。全7面構成のクォータービュー型アクションで、ジャンプやショットを駆使して進めていくなかで、ステージによっては宝探しや強制スクロールシューティングなどの要素も含まれる。自機の動きやステージ背景、ボスの造形など、全体的に画作りが小綺麗で遊び心があり、ポリゴン表現は簡素ながら愛嬌が感じられる。自機は機敏で、連射で敵を蹴散らせる手軽さがあり、あちこち散りばめられたギミックは王道揃いであるため、斜め入力の操作性に慣れていればすんなり遊べるとっつきやすさがある。一方でクォータービュー特有の高低差やボス戦など要所要所に難関が控えていて、それなりに歯応えがある。総じて軽さと堅さを兼備した仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは田辺文雄氏、中野恭宏氏、向井真氏。いずれも当時タムソフトに所属していた作曲家である。このうち向井氏がメインで担当していたようである。また、田辺氏はおそらく本作がデビュー作で、中野氏と向井氏に関しても本作より前の担当作品は1作だけ(本作と同年発売の闘神伝)である。本作ではポップでカラフルな世界観に合わせて、サンバや行進曲といった明るくせわしない曲調から、いかにもワルそうな低音を利かせたブラスオーケストラ系のもの、シューティングならではの煌めきを湛えたものなど、各種取り揃えられている。また、サックス演奏に吉永寿氏を起用している点が特筆に値する。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。
タイトル画面で流れるのがこの曲である。出だしの第一音からスチールパンを鳴らして底抜けにお茶目な印象を漂わせ、聴いているだけで微笑ましい気分にさせてくれる。初めはおどけているかのような響きがあるが、15秒からサックスが入ると、ぐっと来る格好良さと艶やかさが滲むようになる。特に42~46秒で高音を奏でた直後に再度スチールパンに出番を与えることで、単にお茶目であるだけに留まらぬ音色の豊かさ、響きの奥深さを見せつけてくれる。スチールパンが主役を務める傍らでサックスも引き続き後ろで支えるように演奏し続け、1分17秒でサンバホイッスルが鳴るのを合図に再び主役が交代する。しばらくの間なんとも清々しく眩いソロを披露すると、また馴染みのフレーズに戻るが、2分19秒でもう一度ホイッスルが鳴ると新たなパートへ突入する。最後まで輝かしい勢いで突き抜けていく。聴き始めは微笑みを、聴き終えた暁には満面の笑みを浮かべたくなる一曲である。
1分47~48秒の高音の裏で潰れたようなダーティーな音が響くところが特に好きです。