タムソフトがおくるコミュニケーションRPG・ナイト&ベイビーより、
梅垣留奈作曲、『イステンのテーマ』。イステンの村で流れます。
チョロQシリーズなどの開発元として知られるタムソフトの初の自社パブリッシング作品にあたる本作。平和な村に暮らしていた少年・ナイトと妖精のニーニーナは、ある日落ちてきた怪物の赤ん坊・ベイビーとの出会いをきっかけに、世界をめぐる大冒険を繰り広げることになる。フル3Dで描かれるオーソドックスでメルヘンチックな世界観が特徴的なRPGで、ベイビーを自分好みに育て上げる育成要素が含まれる。旅のなかでベイビーに褒めたり叱ったり、おつかいをさせたり、おやつをあげたりすることで、パラメータや好感度が変化する。戦闘は手動でコマンド選択できるナイトと、大まかな指示出し以外は自動で戦うベイビーのタッグで進めていくが、ベイビーは好感度に応じて指示を聞いたり聞かなかったり、ときにはナイトに八つ当たりしたりする。ベイビーには敵の姿をコピーする変身能力が備わっていて、運頼みで狙って発動させるのは難しいが、変身先によっては強力な技を放てるようになる。また、戦闘に関連する収集要素としてリビングトイズという魔法のおもちゃがあり、フィールドの各地に散らばるものを集めれば戦闘中に多種多様な効果を発揮できる。全体的に緩く大味なところがあるが、まったりすっきりと楽しめる仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは石村睦氏、梅垣留奈氏、田辺文雄氏、中野恭宏氏、本山明燮氏。いずれも当時タムソフトに所属していた作曲家である。本作ではサウンドチームの総力を結集して音楽を通じた世界観づくりを徹底していて、場面ごとに彩り豊かな作風を楽しむことができる。シンセやオーケストラを中心として親しみやすく瑞々しく、ときに牧歌的でときに王道な勇ましさや格好良さがある楽曲を数多く取り揃えている。なかにはジャズやブルースのような心地良いリズム感や温度感を持つものもある。サウンドトラックは未発売だが、一部楽曲についてはライブ演奏の際に曲名と作曲者が判明している。
イステンで流れるのがこの曲である。序盤に立ち寄る海沿いの村で、村一番の強者が長になるというしきたりからその座をかけて文字通り戦う村長決定戦がおこなわれている。そうしたなか、出だしから非常に強く突き抜けるような響きのあるハーモニカを鳴らすことで独自の風と空気を漂わせる。主旋律の聴き応えもさることながら、後ろでファンキーなうねりを利かせたベースや、程よく合いの手を添えるギターを組み合わせることで、音色の一つひとつが活き活きとした存在感をみせる。12秒からはハーモニカに代わって電子オルガンの丸く艶やかな音色が奏でられ、歯切れ良く紡がれるギターやタンバリンと相まって素敵なグルーヴを生む。一連のフレーズを締め括るように36~38秒で弾けるプラック音を鳴らすと、以降はこれまで以上にお茶目で伸び伸びとした印象を帯びるようになる。1分4秒頃で長く音色を引き伸ばすと、やがて遠くからクロスフェードするようにハーモニカが再び聴こえ出し、そのうちループに突入する。不思議な活気と覇気のある一曲である。
なんだか込み上げてくる良さがありますね。ハーモニカ繋がりで次元門の曲もとてもおすすめです。あわせてどうぞ。