タイトーがおくるシューティング・スペースインベーダーより、
和田貴史作曲、GET EVENの『LAST ENEMIES』。ラスボス戦で流れます。
スペースインベーダーシリーズの外伝作としてWiiウェア向けに配信された本作。今度はプレイヤーが侵略する側であり、チキュウ人に借りを返すべく自機のUFOと取り巻きの100体のインベーダーたちとともに戦うことになる。全7ステージ21エリアから成り、ステージは拡張パックを購入することで増える。各エリアにはクリア条件と制限時間があり、そこそこ広い範囲を探索しながら任務を遂行する必要がある。制限時間は時間経過の他に被弾によっても減るが、そのへんの建物や兵器を破壊したり、ときにはウシを連れ去ったり遺跡群に立ち寄ったりすることで回復する。特筆すべきは攻撃手段のバラエティと破壊演出のインパクトで、取り巻きのインベーダーたちを弾代わりにして一定人員を突撃させることで多彩な動きを実現することができる。直線状のショット、追尾のホーミング、対地爆弾のようなバースト、跳ねる軌道を描くホッピング、持続ダメージを与えるドリルの5つのアタックタイプに加え、使用回数に限りはあるが有事の際に画面全体を攻撃しつつ補給もできるSPアタックが存在する。取り巻きを突撃させて攻めに入れば必然的に守りが薄くなるし、人員不足にならないよう適宜補充することが重要であるなど、RTSに通ずるゲーム性がある。総じて歯応えと快感のバランスが優れた仕上がりとなっている(現在は配信終了済み)。
本作の音楽を担当するのは菊地寛崇氏、本山淳弘氏、和田貴史氏。和田氏は音楽制作会社Dimension Cruiseの代表、菊池氏は同社所属の作曲家で、本山氏はフリーランスの作曲家である。いずれもスペースインベーダーシリーズの作曲には初参戦のようだが、和田氏はタイトー製という括りでなら本作以前にアルカノイドDSでの作曲経験がある。本作では侵略者という観点から映画的な臨場感のあるオーケストラサウンドが取り揃えられていて、仰々しいBGMとともにチキュウを侵略している気分をたっぷり味わえる。なかには往年の雰囲気を意識したレトロでデジタルなテクノ系のナンバーもある。サウンドトラックには未使用曲も含めて収録されている。
ラスボス戦で流れるのがこの曲である。対峙する相手は巨大なUFOを象ったチキュウの最終決戦兵器であり、全方位に弾を巻き散らしたり極太レーザーをぶっ放したり、果てにはインベーダーを召喚したりと随分なやりたい放題である。そうしたなか、第一音からオーケストラヒットとともに圧迫感あふれるコーラスを組み合わせることで、瞬く間に絶体絶命の脅威と戦慄を覚えさせる。油断も隙も容赦もなく畳みかけるオーケストラに、ノイズ交じりのデジタルなエフェクトを被せることで、まるでサバイバルホラーのような凶悪なプレッシャーを漂わせる。13~25秒でコーラスが主役を務めた後、26秒からはブラスの存在感が強まり、またコーラスパートを挟んであらためて52秒でブラスが目立つときにはストリングスの高音も一緒になって襲いかかってくる。終始狂暴な曲調が続くなかでも、1分2~4秒や1分16~18秒で笛が鮮やかなアルペジオを披露している点が印象的で、曲の流れと勢いをうまく支えている。剥き出しの殺意が詰まった一曲である。
こういうゴリゴリな曲は一周回って聴いてて安心します。ちなみに未使用曲の『THE MOON OF DAYBREAK』(作曲は本山さん)もすごく好きです、こちらはお洒落な落ち着きがあります。あわせてどうぞ。