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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1452 『Path to evil』(桜庭統/テイルズ オブ アライズ/PS4・PS5・XOne・XX|S)

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バンダイナムコがおくる心の黎明を告げるRPG・テイルズオブアライズより、

桜庭統作曲、『Path to evil』。移動要塞クレーディアで流れます。

テイルズシリーズの25周年記念作にあたる本作。圧倒的な科学力と魔法を誇るレナ、その支配下にある自然豊かなダナ、隣り合う二つの星を舞台に、記憶と痛覚を失った鉄仮面の青年は、訳あって同胞に追われるレナ人の少女・シオンとの出会いをきっかけに、双世界の命運を揺るがす戦いに挑むことになる。シリーズの新世代を彩るにあたって、ストーリー、グラフィック、戦闘システム、どれをとっても没入感あふれる水準を実現している。様々な事情や感情を秘めたキャラが織り成す過酷かつ王道な物語が特徴で、本筋の他にもスキットや野営での会話を通じてキャラ同士の交流を奥深く楽しめる。グラフィックはアニメ調とリアリティのある絵画風が高度に融合していて、人物も自然も瑞々しく表情豊かに描かれている。戦闘システムはフリーラン形式でアクション性の高いものを採用していて、ボタンに応じた多彩な術技を駆使しながら戦う傍ら、ゲージ消費で放つ仲間の支援攻撃・ブーストアタック、仲間と協力して繰り出す必殺技・ブーストストライク、ジャスト回避時に即座に反撃できるカウンターレイドなど、派手で手触りの良いアクションが揃っている。その他、料理や釣り、フクロウ探しなどの寄り道要素もしっかり存在する。総じてJRPGらしい王道さと濃密さと快適さを兼ね備えた仕上がりとなっている。後に一日遅れてSteamに登場した。

本作の音楽を担当するのは桜庭統氏。テイルズシリーズには初代から連綿と携わっているフリーランスの作曲家である。また、主題歌にはロックバンド・感覚ピエロと、シンガーソングライターの絢香氏をダブルで起用している。本作ではボリューム満点な壮大な冒険に見合うように、楽曲数も100曲を越える充実ぶりで、鬼気迫るオーケストラと重厚なロックサウンドが多く取り揃えられている。とりわけ戦闘曲に関しては、頻繁に聴く通常戦闘曲の力強さはもちろんのこと、ボス戦や各ダンジョン用など場面ごとに豊富に用意されている。サウンドトラックについては、ボーカル曲込みの7枚組で収録されている通常盤のほか、DLC楽曲を収録したものも存在する。

移動要塞クレーディアで流れるのがこの曲である。物語後半にかけて訪れる巨大な戦艦で、奥部には魔女として悪名高い風の領将が待ち受ける。本作唯一の時限ダンジョンで、下層から第4層まで長丁場の探索と戦闘が続く。焦らしの利いたストリングスのイントロで始まり、徐々に激しさを増すティンパニの打音や、9~10秒で張り裂けるように響く管楽器を取り入れながら勢いを強めていく。10秒以降にはコーラスが顕著に聴こえるようになり、オーケストラの分厚い演奏とともに息が詰まるような焦燥感を生み出す。特に30秒過ぎではコーラスが伸び伸びと、しかし解放的とは程遠い重圧感を湛えながら響き渡ることで、予断を許さない苛烈な印象を与える。基本的にオーケストラとコーラスが終始重苦しく合奏するが、1分18~22秒でコーラスが急激に不穏な響きを纏ったり、1分33秒以降にはストリングスが荒ぶり出して今まで以上に緊迫感が強まったり、かと思いきや1分43秒以降で鉄琴やハープの甘美なフレーズが奏でられたりして、一口に重苦しいといっても様々な表情をみせてくれる。2分5秒あたりでドラムの見せ場を挟んだ後、管弦楽器とコーラスが激しくも豊かな演奏を披露し、2分41秒から今一度したたかな盛り上がりをみせる。そうして約3分にわたって強烈な迫力と圧力を維持し続け、やがてループに突入する。重く恐ろしく、そして昂揚感あふれる一曲である。

戦闘時はロックアレンジの『Path to evil - Advance -』が流れますが、これがなんともド直球の攻撃性があって昂ります。あわせてどうぞ。

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