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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1456 『大聖堂』(GAINGAUGE/最後の約束の物語/PSP)

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イメージエポックがおくるJRPG最後の約束の物語より、

GAINGAUGE作曲、『大聖堂』。大聖堂で流れます。

ルミナスアークシリーズで知られるイメージエポックの初の自社パブリッシングタイトルとして登場した本作。魔導と騎士道を重んじるユグドラ王国を舞台に、突如として襲撃してきた新興国家の機械兵団に成す術なく王都陥落の危機を迎えるなか、滅亡までの最後の一日で騎士たちは決死の戦いに挑むことになる。ミッション形式で進めるダンジョンRPGで、ダークジュブナイルファンタジーと銘打つ通り重く悲壮感のある世界観が特徴である。ターン制コマンドバトルだが敵対心(いわゆるヘイト管理)とキャラロストの概念があり、敵は全体的に手強いため、常に仲間の状態に気を配りながら立ち回る必要がある。特定のミッションをこなして仲間と交流を深めていくと、互いに誓いを立てて最終的に重要な約束を交わすことができ、約束をした相手と騎士団員の生存数に応じてエンディングが分岐する。上質な雰囲気と興味深いシステムが備えられているが、舞台設定に囚われて行動範囲が狭く使い回しが目立ち、物語やキャラ描写の掘り下げもすくないなど、やや薄味な面も見受けられる。コンセプトを重視した意欲作に仕上がっている。

本作の音楽を担当するのはGAINGAUGE。メインコンポーザーのNek(小池尚弘)氏とサブメンバーのManabe Akiyoshi(真鍋明義)氏から成るツーピースのデジタル系サウンドユニットである。本作をデビュー作とし、イメージエポック製の作品だと後のソールトリガーでも作曲することになる。本作の音楽はファンタジーらしい雰囲気を存分に盛り上げてくれる、オーソドックスでドラマチックなオーケストラサウンドが揃っている。ストリングスやオルガン、コーラスなどをふんだんに用いているが、戦闘曲などを中心にところどころデジロック風味の作風がみられる。サウンドトラックには未使用曲や主題歌のフルバージョンなども含めて収録されている。

大聖堂で流れるのがこの曲である。本作の拠点であり、陥落間際の王国にとっての最後の砦とも言える場所である。そうしたなか、ピアノと鐘とストリングスを巧みに組み合わせることで、荘厳で優雅で、けれど退廃的な空気感を纏った空間を没入感たっぷりに表現している。拠点なので序盤から頻繁に訪れるが、曲調はクライマックスらしい悲壮感を帯びていて、終始メロディアスでメランコリックな調子を貫き続ける。21秒から主旋律が入っても大きく流れが変わることなくじっくりとたっぷりと哀愁を漂わせ、1分手前でコーラスとピアノの見せ場が与えられるとさらに物憂げな印象に磨きがかかる。物憂げでも決して暗いわけではなく、高音を散りばめるピアノや落ち着きのあるビートを綺麗に絡み合わせて、きらりと輝くような雰囲気を醸し出している。悲劇的だが絶望的ではない精妙な煌めきに満ちた一曲である。

なんだか聴いていると心が洗われますね。