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#1457 『In despair』(赤堀正直/重装機兵ヴァルケン/SFC)

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メサイヤがおくるSFリアルアクション・重装機兵ヴァルケンより、

赤堀正直作曲、『In despair』。バッドエンディングで流れます。

メガドライブ向けのアクションシューティング・重装機兵レイノスと世界観を共有する後継作にあたる本作。2101年、環太平洋合衆国と欧州アジア連邦の二大勢力が衝突して第四次世界大戦が勃発するなか、合衆国海兵隊の装甲機兵小隊長を務めるジェイク=ブライン中尉が強襲揚陸艦バーシスに乗り込んで戦うことになる。徹頭徹尾ハードSFに徹したロボット戦記ものの横スクロール型アクションシューティングで、キャラ同士の無線のやりとりを挟みながらエンディング分岐ありの全7面を攻略していく。攻撃手段は連射が利くバルカンと近接攻撃のパンチの2つの標準武装に加え、道中で対応するアイテムを入手することで、チャージして放つ貫通型のレーザーと追尾性能のあるミサイルも使えるようになる。戦場らしさがひしひしと伝わるグラフィックと演出が大きな魅力で、硬派な質感で描き込まれたステージ背景のなか、飛び散る薬莢、炸裂する土煙や爆風、無重力ならではの浮遊感など、ロマンあふれる要素を存分に堪能することができる。慣性のかかり方や敵の手強さから一筋縄ではいかない難度を誇るが、総じて均整の取れた良作に仕上がっている。後にPS2に移植されたほか、各種便利機能や資料集を搭載したDECLASSIFIED版がスイッチ向けに登場した。

本作の音楽を担当するのは赤堀正直氏。当時、音楽制作含むコンテンツ開発会社・オーパスに所属していた作曲家である。スタッフロールでは音楽および効果音欄にて会社名義でのみクレジットされていて、具体的な担当者は未記載だが、サウンドトラック等を通じて氏が担当したことが明かされている。本作ではオーケストラ風のシンセサウンドを軸に、緊迫感とドライブ感を兼ね備えた楽曲が取り揃えられている。サウンドトラックについては、オリジナル音源(インゲーム音源ではなく実機に落とし込む前のソース音源)とリアレンジ音源を収録した通常盤が存在するほか、一時期EGG MUSICにてスーファミの実機音源を収録したものが配信されていた。

バッドエンディングで流れるのがこの曲である。特定のミッションで要件を満たせなかった場合に辿り着く結末で、戦争は終結したものの大切なものを失って絶望に暮れる主人公の独白が綴られる。無念に満ちた悲壮な幕引きを彩るにあたって、ストリングスとハープの流麗な組み合わせによって美しくもやるせない雰囲気を充満させる。ざわざわと小刻みに音色を紡ぐことで、打ち震えるような喪失感を生み出している。30秒過ぎでおもむろに主旋律が入ると、いっそう深く憂愁を漂わせるようになるが、それと同時にエンディングにふさわしいヒロイックな響きも感じさせる。1分4秒から高音を用いて盛り上がるさまは見事で、さらに1分20秒から弦をはじくピチカート奏法によるアルペジオを取り入れることで卓抜したメリハリをみせる。報われないが最後までやり遂げたのだと強く印象付けてくれる一曲である。

この上なく悲劇の結末にふさわしい曲調で、本当に素晴らしいですね。個人的には原曲音源が好みですが、リアレンジ音源はクリアなシンフォニックサウンドになっていてそちらも聴き応えあります。あわせてどうぞ。

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