井上岳志・橋詰友美子作曲、『自由都市グリード』。グリードで流れます。
オンライン要素を取り入れたRPGとして登場した本作。剣と魔法のファンタジー世界を舞台に、ワイン商の青年・レナードは、バランドール王国の王女・シズナ姫の成人の式典に居合わせるも、眼前で謎の組織・ウィザードに姫がさらわれたことをきっかけに、偶然手に入れた騎士に変身する力を使って姫を救う旅に出ることになる。王道を極めたハイファンタジー調の世界観に変身ヒーローもののエッセンスを加えた作風が特徴で、物語を進めるオフラインのストーリーパートと、オリジナルのアバターを作成して他のプレイヤーとクエストを進めるオンラインのライブパートが存在する。戦闘はシームレス、自由移動が可能だがアクション要素は控えめなMMORPG風のシステムを採用している。シナリオはボリューム薄めで尻切れトンボ気味だが、全体を通してオーソドックスな雰囲気を徹底した仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは井上岳志氏と橋詰友美子氏。いずれもレベルファイブ所属の作曲家である。主題歌の作曲で音楽制作チーム・Elements Gardenの上松範康氏も参加している。本作では音楽面でも典型的なファンタジーらしさを重視していて、オーケストラ主体で壮大なものから牧歌的なものまで各種取り揃えられている。サウンドトラックはボーカル曲含め2枚組で収録されている。
自由都市グリードで流れるのがこの曲である。巨大なモンスターの背中の上に建造された都市で、蒸気機関の発展がめざましく、商業が盛んであるがゆえに闇市なども存在する。その独特な風土を表現すべく、初めはピアノソロでしっとりと、20秒頃からはクワイアを交えて神秘的な空気感を醸す。ピアノと混声コーラスの美しいアンサンブルに聴き惚れるうちに、57秒あたりから歌声に代わってオーボエが加わり、その丸みを帯びた旋律が伸び伸びと響き渡る。オーボエパートが終わってコーラスが入ると、再び幻想的な温かみに満ちた盛り上がりを見せる。優しくも厳かで、深い癒しをもたらす一曲である。
闇市があるほうの地区はダウンタウンで別曲です。ギターとシロフォンの味わい深い合奏が素敵で、そちらも良い雰囲気が出てます。『グリード・ダウンタウン』、あわせてどうぞ。