Antonio Prohías著のコミックストリップを原作とする、
ケムコがおくる対戦アクション・スパイvsスパイより、
Nick Scarim作曲・増野宏之編曲、ファミコン版の『メインテーマ』(仮称)。
プレイ中に流れます。
アメコミ「Spy vs. Spy」のゲーム化作品としてアメリカの開発会社・First Star Softwareが制作したオリジナル版の日本向け移植にあたる本作。互いに敵同士の黒と白のスパイが、制限時間内に潜入した建物で目当てのブツを入手して脱出すべく競い合うことになる。上下二分割の画面で、片方のスパイをプレイヤーが、もう片方をCOMもしくは別のプレイヤーが操作し、建物内をめぐって4種類のアイテム+収納用のカバンを手に入れた状態で出口に辿り着くのが目的である。事前に罠を仕掛けて相手を妨害することができるほか、同室に鉢合わせたら素手もしくは武器で戦う戦闘要素もある。罠にかかったり戦闘に負けたりすると30秒間行動不能になるなどの手痛いペナルティを喰らうため、いかに対策を練るか、いかにうまく相手を出し抜くかが攻略の肝となる。シンプルながらもスパイの駆け引きを体感できる緊張感あふれる仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは増野宏之氏。当時ケムコに所属していた(厳密には大学在学中だったが、在学時から活動していた)作曲家兼プログラマーである。オリジナルのコモドール64版の作曲者はアメリカ出身のNicholas "Nick" Scarim氏で、増野氏は移植に際する編曲と新規書き下ろしのタイトル画面用の作曲を担当している。追加曲を含めても総曲数は2曲とすくないが、いずれもファミコン音源に馴染むサウンドに仕上がっている。また、効果音まわりも非常に特徴的につくり込まれていて、スパイの狡猾な笑い声や罠の設置音・起動音などが対戦を程よく盛り上げてくれる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。
専用曲のあるタイトル画面、無音のモード選択・リザルト画面を除き、プレイ中にずっと流れるのがこの曲である。短く変化に乏しい素朴なフレーズを反復し、淡々としたスパイ同士の争いを没入感たっぷりに彩る。高音域で推移する主旋律の裏で、すこしずつ音程が下がっていくバラードのようなコード進行を使うことで、耳に残るような哀愁をほんのりと漂わせている。油断ならない攻防を不思議と焦燥感を煽るような簡素な音色で表現した一曲である。
この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。移植が多岐にわたり、機種ごとに音源もだいぶ異なるようですね。参考までにC64版(単曲動画は見つからないためプレイ動画です)もどうぞ。柔らかみのあるファミコン版と比べて、音源の性質上、より淡々としている感じがします。