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#1537 『草原(夜)』(増野宏之/ドラッケン/SFC)

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InfogramesがおくるRPG・ドラッケンより、

増野宏之作曲、SFC版の『草原(夜)』(仮称)。夜の草原で流れます。

フランスの老舗ゲーム会社・InfogramesがAmiga向けに制作した作品のスーファミ版として、ケムコが移植を手がけた本作。かつて人間に滅せられた竜人・ドラッケンが住まう島を舞台に、人間の世界への報復を企むドラッケンの脅威と、ドラッケン一族のなかで巻き起こる内乱に対処すべく、人間の勇者が旅立つことになる。Amiga版原作同様、キャラメイクで最大4人のパーティを編成し、昼夜の概念のある疑似3Dのフィールドを主観視点で360度にわたって自由に冒険し、戦闘は完全にオートで進行する。世界観や台詞回しなど独自の文化と神秘が宿るファンタジックでシュルレアリスティックな作風は健在だが、移植に際して描写が割愛されたり平易に書き直されたりしている。移植版における変更点として最も目立つのはレベルデザインの調整で、謎解きや即死ギミックの厳しさは大きく緩和され、敵の強さは抑えられ、冒険のヒントや地図の表示といった便利な機能が追加されるなど、いたるところで手が加えられている。総じて原作譲りの面妖な味わいを保ちつつ、スーファミ初期のRPGとして再構成された仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは増野宏之氏。当時ケムコに所属していた作曲家である。Amiga版原作ではフランス出身のCharles Callet氏が音楽を手がけていたが、移植に際して一部アレンジを残しつつもほぼすべての楽曲が一新されている。原作のサウンドまわりはなんとも特殊で、環境音や謎の奇声などを中心とした形容しがたい異音で形成されている。一方で本作では、変わらず一定数これらの異音が存在するなかでも、大部分は耳馴染みのするメロディーを持つ新曲として書き下ろされている。神秘的で数奇な雰囲気に合わせて、丸みと深みを帯びた電子オルガンの音色を取り入れた楽曲が多く揃えられている。前述の通り本作には昼夜の概念があるため、フィールド曲には昼と夜で異なる仕様で、音楽を通じて冒険への没入感を高めてくれる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

夜の草原で流れるのがこの曲である。草原はスタート地点である緑豊かなフィールドで、夜になると濃紺の空に星々が煌めく。昼に流れる曲は、穏やかさと小気味良さを併せ持ったメロディアスな曲調を特徴とするが、夜に流れるこの曲はテンポを落として切なさとまろやかさを強調している。出だしから思わず溜め息を漏らしてしまいそうなほどの美しさにあふれていて、主旋律と伴奏が互いに支え合いながらしっとりと丁寧に音色を紡いでいく。高音域の持つ表現力の豊かさで心洗われ、48秒から奏でられる低音パートで心の奥まで響く味わい深さを感じさせる。1分25秒あたりですこし明るめな印象を帯び始めるが、間を置かず1分32秒で綺麗にリタルダンド(テンポを次第に落とす表現法)をかけてしんみりと締め括る。いつまでも星空を眺めていられるような気分に浸らせてくれる一曲である。

素敵この上ないですね。昼の曲もこれがまた絶品なんです。あわせてどうぞ。

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