VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1171 『Title Screen』(Rob Hubbard/Budokan: The Martial Spirit/MD)

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Electronic Artsがおくる対戦格闘・Budokanより、

Rob Hubbard作曲、MD版の『Title Screen』(仮称)。タイトル画面で流れます。

上記動画の0:07から2:31まで。

日本の武術を題材にした対戦格闘ゲームとして登場したAmiga版原作の移植にあたる本作。Tobiko-ryu Dojoに弟子入りした主人公は、Budokanでおこなわれる武術大会の優勝を目指して特訓することになる。空手・剣道・棒(棒術)・ヌンチャクの4種の道場に通い、自由練習するか組手するかして武術を磨き、用意が整ったら大会に出場する、というのが大まかな流れである。ゲージはSTAMINAとKIに分かれていて、前者は被弾したり一部の技を使ったりすると減り、残りすくないほど動きが制限されて不利になるが、休むことで回復する。後者は徐々に溜まっていき、溜まった量に応じて攻撃が強まるが、行動すると減るため、うまく管理する必要がある。対戦相手は脱サラしたチョンマゲや鎖鎌使いの仙人、謎多き忍者など、いずれも曲者揃いの難敵が待ち受ける。また、道場や武道館に加え、扇子、富士山、新幹線といった和風なものが多く登場することから、オリエンタルな世界観を楽しめる。操作は全体的にシビアで根気を要するが、独特な濃厚さを誇る仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはRob Hubbard氏。当時Electronic Artsに所属していたイギリス出身の作曲家である。80年代後半からゲーム音楽に携わっていて、本作は数ある担当作品のうちの一つである。本作では和の世界観に寄り添った厳かで雅やかな楽曲が揃えられている。仕合の最中は無音だが、開始の合図である「ハジメ!」をはじめ、掛け声ややられ声といった野太いボイスが響くことで、真剣勝負らしい神妙な雰囲気を醸し出している。また、移植に際してメガドライブらしい金属質でフラットな音源にあわせてアレンジされている。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

タイトル画面で流れるのがこの曲である。左には赤備えの槍使い、右には白道着のヌンチャク使い、背景には紅く染まった空に厳島と思しき大鳥居が佇む、非常に見映えのする画面構成が特徴である。はじめは控えめな曲調で、きめ細やかに奏でられる伴奏と威容を放つ琴の音が物静かに響く。18秒(上記動画では25秒)から重低音を担うベースが加わると、引き続き穏やかな威厳を保ちつつ、より華やかで厚みのある印象を与えるようになる。その後しばらくは似た調子が続くが、50秒過ぎ(1分)で音程が上がると、曲調そのものには大きな影響を及ぼさないものの、わずかに昂揚するような響きを帯びる。1分35秒頃(1分42~44秒)で華麗に音階を駆け下って一段落つき、一旦は馴染みのあるフレーズに回帰するが、1分50秒(1分57秒)で以前より長めに音を鳴らすなどして、まだ曲に続きがあることを知らしめる。終盤(2分19秒以降)では伴奏が止んで主旋律のみが響くことで、後を引く余韻を残しながら、はたりと幕を閉じる。和ならではの真に迫る深みを感じさせる一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。Amiga版原曲はテンポ遅めで寂寥感強めな感じです。あわせてどうぞ。

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