VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1260 『Night Illusion』(益子重徳/エア・グレイヴ/PS)

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サントスがおくるシューティング・AIRGRAVEより、

益子重徳作曲、『Night Illusion』(仮称、後述)。

AREA3「York city at night」で流れます。

シュタールフェーダーで知られるサントス製シューティングの第2弾にあたる本作。統合軍がMUCOCと呼ばれる勢力と争う世界を舞台に、統合軍の戦闘部隊・ブルーナイツ所属のパイロットである主人公は、与えられた任務をこなすことになる。全8面構成の縦スクロールシューティングで、開始時に初期4種+隠し1種から自機(主人公)を選択する。大筋やステージ構成は共通しているものの、主人公別に展開する物語が微妙に異なる。特筆すべきはボイス付きで語られる幕間のブリーフィングで、進軍路や戦況、それに対するパイロット陣の反応などを描くことで、ミリタリーSF風のメカアニメのような雰囲気を漂わせている。シューティングそのものの内容はというと、対空と対地でショットを使い分ける仕組みで、対地では通常弾に加え、ボタン長押しでロックオン範囲を表示して対象を一網打尽にするエイミングファイアを放つことができる。また、ゲージ消費で猛攻を仕掛けるオーバードライヴ(使い勝手はボムに近い)という攻撃手段もある。やや視認性やポリゴン表現が拙いが、演出や雰囲気づくりへのこだわりが感じられる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは益子重徳氏。スタッフロールに記載はないが、花岡拓也氏も携わっている。いずれも当時、音楽制作会社スタジオクリシェに所属していた作曲家で、花岡氏は移籍したばかりだったそうである。本作ではロックやフュージョンを基調としたバリバリ響くアグレッシブな楽曲が揃っている。サウンドトラックは未発売だが、曲ごとの担当者の内訳はスタッフの言及により判明している。また、正式曲名かどうか定かではないが、スタッフロールのMUSIC COMPOSE欄には人名に続いて曲名と思しき英字が羅列されているため、ここではそれに基づいて便宜上の仮称を付すものとする。

AREA3「York city at night」で流れるのがこの曲である。都市部への夜襲任務で、眼下には暗闇に覆われた高層ビル群や装甲列車のレールが見受けられる。本作の道中曲の多くは派手さや勇ましさで特徴付けられるが、この曲は夜の都会という状況を反映してか、それらの特徴に付け加えて、乙なグルーヴ感を色濃く漂わせている。シンセポップ風の華やかさと切なさに満ちたメロディアスな曲調に、6秒頃などでみられるファンキーなクラビネットの音色を加えることで、こってりとした聴き心地だが耳馴染みしやすい印象を与える。17秒でメインメロディーが入ると、しばらく似た調子のフレーズが続くが、40秒過ぎで流れが変わると、歌うように伸び伸びと響く旋律とは裏腹に、ドラムのリズムは間隔が詰まってせわしげに打ち鳴らされるようになる。53秒以降の間奏では再びファンキーな色合いが強まり、煌びやかな演奏を披露した後、やがてループに至る。快いノリが感じられる一曲である。

音色の伸び方が気持ち良いですね。