VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1208 『ラストバトル』(西川浩史/ツインクルテール/MD)

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WASがおくるファンタジーシューティング・ツインクルテールより、

西川浩史作曲、『ラストバトル』(仮称)。ラスボス戦で流れます。

東洋レコーディングのゲームレーベル・WAS(Wonder Amusement Studio)のデビュー作にして唯一の作品である本作。宝石の調和により誕生したとされる魔法世界・アルフィリオンを舞台に、見習い魔法使いのサリアは、反乱を起こした黒の魔導士・ガドウに立ち向かうべく、師匠から授かった魔法道具を手に戦うことになる。全8面構成の縦方向のライフ制任意スクロールシューティングで、自機が魔女っ娘である点が特徴である。操作は8方向移動+通常攻撃(いわゆる一般的なショットに該当する)・攻撃魔法(ボムに該当する)・魔法の切替から成り、道中の宝箱でパワーアップすることができる。ビジュアル面では、挿絵風のプロローグをはじめ、全体的に色鮮やかなハイファンタジーの世界観が徹底されている。また、ステージ内ではメッセージウィンドウ付きで会話するシーンが含まれるなど、世界観に見合った物語がしっかりと用意されている。内容・システムともに王道で手堅くまとまった仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは西川浩史氏。効果音制作も兼任していて、スタッフロールにはH.Nishikawaとしてクレジットされている。情報がすくなく判然としないが、90年代に活動していた作曲家である。本作の開発元とされるZAP製の作品でいうと、本作以前にもバルンバ(同じくシューティング)での作曲経験がある。本作ではメガドライブ特有のメタリックなFM音源を駆使したシリアスで勇ましい楽曲が揃っていて、魔女っ娘モノといって思い描くポップでチャーミングなイメージとは一味異なる、厚みのあるサウンドを楽しむことができる。サウンドトラックについては、一部楽曲を収録したミニサントラが存在するため、一部のみ曲名が確定しているが、未収録曲の正式な曲名は不明である。

ラストバトルで流れるのがこの曲である。火柱が舞い上がる魔界にてラスボスと対峙し、戦前に会話を交わした後(この会話シーンには専用曲があり、ゴシック風のキンキン響くオルガンによって決戦直前のムードを彩ってくれる)、この曲へと切り替わって決戦の火蓋が切られる。冒頭の1秒間ほど激しくパーカッションを鳴らして臨戦態勢を整え、次いで主旋律のオルガンが入ると、燃え盛るような勢いで縦横無尽に駆け回る。主旋律の爆発力はさることながら、パンチのあるキックドラムが随所で響くことで、非常に迫力のある印象を与える。14秒からは一段と荒ぶるようになるが、27秒でオルガンが一時的に抜けると勢いは下火となる。伴奏は変わらずスピーディーだが、代わりに主旋律を担うブラスは、やや落ち着いた調子で悲壮なメロディーを奏でる。が、50秒過ぎで伴奏に鮮やかなアルペジオが加わると、激しさを取り戻していっそう強く盛り上がる。ループ直前の1分15~18秒では効果音を印象的に用いることで、耳に残るようなインパクトを生むと同時に、その後に向けてうまく仕切り直す。猛火の如く力強い一曲である。

最終決戦らしい圧迫感と勇壮さのバランスが良くて格好良いですね。決戦前の会話BGMもあわせてどうぞ。

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