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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1190 『EVERYTHINGS BEGUN』(竹内啓史/スプリガン mark2/PCECD)

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コンパイルがおくるドラマチックシューティング・スプリガンより、

竹内啓史作曲、mark2の『EVERYTHINGS BEGUN』。1面で流れます。

コンパイルが開発し、ナグザットが販売したPCエンジンCD-ROM²向けの縦スクロールシューティング・精霊戦士スプリガンの続編にあたる本作。人類が宇宙に進出した近未来を舞台に、火星での領土拡大を狙ってA国とS国が対立を深めるなか、A国軍の敏腕パイロット・グレッグは、新型機体のスプリガンのテストに際して原因不明の襲撃を受けたことをきっかけに、やがて惑星間戦争に巻き込まれることになる。前作とは異なり横スクロールで、全体的な作風はファンタジーから硬派なロボットものへと方向転換している。全8面構成で、中盤から武装の選択が可能となり、攻撃重視や防御重視など戦況や好みに応じて使い分けつつ攻略していく。特筆すべきは骨太なシナリオで、ステージ間のカットシーンが充実しているだけでなく、ステージ道中でもボイス付きの会話が挿入されるなど、演出面においてかなりこだわっている。濃密な物語を追体験できる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは竹内啓史氏。当時コンパイルに所属していた作曲家である。前作の精霊戦士スプリガンでは複数人と共同で作曲していたが、本作では単独で手がけている。作品全体を鑑みると前作とは毛色が異なる部分が多いものの、音楽面では前作譲りの前のめりでノリの良いシューティングサウンドが揃っている。世界観がハードSFに近付いたことでファンタジックな色合いは薄まっていて、楽曲によってはややハウスっぽい艶とスリルを感じさせるものがある。サウンドトラックについては、前作や他の作品と合わせてナグザットシューティングコレクションに本作のBGMが収録されている。

1面「火の星の嵐」で流れるのがこの曲である。突然の襲撃により出撃を余儀なくされる波乱の幕開けを、冒頭から強い哀愁が滲む音色で臨場感たっぷりに彩る。カラッと乾いた音で鳴るパーカッションと、穏やかならぬストリングスの伴奏の上を、悲壮感あふれるシンセの旋律が駆け抜けることで、胸騒ぎを覚えさせるような切迫した印象を与える。47秒あたりでピアノが入ると、それまでの派手な響きから変わって洒落たムードを漂わせる。が、1分過ぎには再び勢いを取り戻し、以前にも増して鮮烈な旋律を奏でる。一連のサビが終わって1分32秒で伴奏のみの間奏が挟まれると、その後は順当にループに至る、と見せかけて、2分17秒以降ではっきりと分かるように、まだ曲に続きがある。物悲しくも劇的な興奮に満ちた一曲である。

初っ端から痺れますね。