VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1585 『銭湯』(本山淳弘/さよなら 海腹川背/3DS)

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スタジオ最前線がおくるラバーリングアクション・海腹川背より、

本山淳弘作曲、さよならの『銭湯』。銭湯ステージで流れます。

伸縮自在のゴムロープを操って道なき道を進む海腹川背シリーズのうち、旬以来16年ぶりの完全新作として登場した本作。今度の海腹川背さんは川や磯だけでなく学校や居酒屋など身近な場所でも自慢のロープ捌きで突っ切ることになる。基本的なシステムは従来通りで、本作ではルート分岐ありの計50面が用意されている。3DS向けということもあってグラフィックは立体視に対応した3Dになったが、ゲーム性は変わらず2Dで、使い方と腕前次第で実現できるアクロバティックな挙動、攻略の自由度に寄与する多様なショートカットなど、シリーズの醍醐味は本作でも健在である。本作ならではの新要素として川背さん以外のプレイアブルキャラが追加され、キャラによっては戻り復活可能なリスタート、時を遅めるスローなど、固有の能力を扱える。また、トランポリンをはじめとするステージギミックが導入された。ステージ選択式で残機を気にせず遊べるメインモードのほかに、残機制で一気に完走を目指すシーケンシャルチャレンジ、おまけのイラストや操作のコツがみられるギャラリーも収録されている。総じてシリーズの魅力を順当に受け継ぎつつ、現代的に間口を広げた仕上がりとなっている。後に追加や調整を加えてVitaとSteamに移植された。

本作の音楽を担当するのは立川伸治氏と本山淳弘氏。両名とも海腹川背シリーズには初代から連綿と携わっているおなじみの作曲家である。本作でもこれまで通り、明るくリラックス感のあるサウンドが揃っている。アコースティックギターやフルート、ピアノ、シンセなどをふんだんに用いてすんなりと耳に入ってくる優しい音色を作り上げている。また、過去作からのアレンジも含まれる。サウンドトラックは本作の早期購入特典として付属されたほか、Vita版に合わせてシリーズの楽曲を集めたリマスタリング盤が存在する。

フィールド20、22、29など、銭湯を舞台とするステージで流れるのがこの曲である。背景には壁いっぱいに富士山が描かれていて、大きなラバーダックや空の牛乳瓶、桶などで彩られている。イントロからキュートでノスタルジックな響きを纏ったEDM風の曲調が印象的で、聴いていると自然と凝りが取れるような気持ち良さがある。17秒頃からハーモニカの旋律が入ると、切なくも温かくて親しみやすい雰囲気が漂うようになり、そこに伴奏のシンセがポコポコと泡のように響き寄り添うことで、うまく曲全体のムードに弾みをつけている。ハーモニカの演奏が終わると、49秒から笛のような透き通る音色が聴こえ始める。時折シンセストリングスがざわざわと響いたり、1分5秒以降では前よりも明るくリズミカルな勢いを帯びるようになったりして、やがて1分22~24秒で綺麗に区切りを付ける。ほんわかしつつ、しみじみしつつ、そっと胸に希望を灯してくれるような一曲である。

いいですね。佳い、と書いたほうが合うかも。