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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1130 『「川・渓流」面BGM』(本山淳弘/海腹川背/SFC)

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TNNがおくるラバーリングアクション・海腹川背より、

本山淳弘作曲、『「川・渓流」面BGM』。渓流ステージで流れます。

伸縮自在のゴムロープを操ってステージを攻略していく海腹川背シリーズの第1作にあたる本作。主人公の少女・海腹川背さんは、お邪魔なサカナたちを釣り上げながら道なき道を進むことになる。ルアーの付いたロープを使って壁や天井に引っ掛け、振り子の要領で勢いよく移動できる独特な操作性が特徴である。使い方次第で一気に跳躍したり、高い壁を上ったり、敵をめがけて攻撃して気絶させたり、捕獲してスコアを獲得したりすることができる。基本的に進捗状況を問わずゲーム開始から30分経つと最終面に飛ぶという制約があり、短時間で気軽に遊ぶか、効率を突き詰めてタイムアタック的な遊びに興じるか、好みに応じて幅広いゲーム性を楽しめる。リアルな背景グラフィック、ステージを徘徊するサカナたち、道中に鎮座する謎の野菜など、世界観はかなりへんてこだが、試し甲斐のある奥深いアクションが魅力的な仕上がりとなっている。後にSteamに移植された。

本作の音楽を担当するのは中野雅仁氏、立川伸治氏、本山淳弘氏。中野氏は音楽ユニット・Pas de Chatの作編曲およびキーボード担当である。立川氏と本山氏は情報が多くないがおそらくフリーランスの作曲家で、両名とも海腹川背シリーズには本作以降も関わり続けることになる。本作はアクロバティックなアクション性にカオスな世界観という珍妙な作風を持つが、楽曲はいずれもとことん長閑で明るいヒーリング系の曲調で統一されている。サウンドトラックは長らく存在しなかったが、発売から14年後に続編の旬の楽曲も含めて収録したものが登場した。

背景画像が渓流であるステージで流れるのがこの曲である。イントロの素朴なリズムで陽気なピクニック気分を漂わせ、14秒頃から笛の主旋律が入ると、そのご機嫌なメロディーがポジティブな雰囲気に磨きをかける。重すぎず軽すぎず、ちょうどよい厚みのあるドラムが周期的に鳴り、そこに渋めのベースラインが組み合わさることで、心地良いノリとテンポ感を生み出す。41秒からはしばらく笛の主旋律に被せて木琴のような音色が一緒に奏でられ、その後ろでラッパが高らかに響くと、これまで以上に活き活きとした印象を与える。1分24秒ほどで一連の流れが完結すると、以降は冒頭によく似ているがすこし賑やかになったフレーズを奏で、再度主旋律が合流する段になってループに突入する。とても朗らかで快い躍動感に満ちた一曲である。

よく晴れた日の散歩とかに似合いそうですね。