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#1131 『FLIP-FLAP-FLOP!』(MASA・五十嵐歩・稲毛謙介・小池雅人・中園秀久・根本慎也/ジーワンジョッキー4/PS2)

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コーエーがおくるドラマチックレーシング・ジーワンジョッキーより、

MASA・五十嵐歩・稲毛謙介・小池雅人・中園秀久・根本慎也作曲、

4の『FLIP-FLAP-FLOP!』。障害G1レースで流れます。

競馬の騎手になってレースを勝ち抜くジーワンジョッキーシリーズのナンバリング4作目にあたる本作。シンボリルドルフら1983年世代から当時の最新世代だったディープインパクトら2004年世代まで、開始時に好きな年代を選択してジョッキー界の頂点を目指すことになる。実名騎手は約50名、競走馬は約9000頭登場し、レースに参加するのはもちろん、自分好みに馬を調教したり騎手と交流を深めたりしながら進めていく。従来から変わって本作ではアナログスティックを手綱に見立てたリアル志向の操作性を採用していて、慣れを要する代わりに上達を実感できる独自のバランスに調整されている。新要素としてチュートリアルモードや幼駒育成モードの追加、騎乗成績に応じたランクシステムの導入など、遊びの幅と間口を広げる要素が搭載されている。全体的に歯応えのある難易度だが、長くやり込める奥深さを持つ仕上がりとなっている。後に年度ごとの拡張版が登場した。

本作の音楽を担当するのはMASA氏、五十嵐歩こと五十嵐一歩氏、稲毛謙介氏、小池雅人氏、中園秀久氏、根本慎也氏。MASA氏と稲毛氏は当時コーエーに所属していた作曲家で、五十嵐氏・小池氏・中園氏は現在も統合を経てコーエーテクモに所属する作曲家である。根本氏については情報がすくなく判然としないが、おそらく当時同社に在籍していたものと思われる。このうち小池氏がサウンドディレクターを務めている。本作では主にレース曲を中心に、シンセやブラスを活かした華やかなテクノやジャズ系の楽曲が揃っていて、同じくコーエー製の無双シリーズに通ずるノリの良さを感じられる(事実、根本氏を除くメンバーはいずれも無双での作曲経験がある)。サウンドトラックは未発売だが、作中にサウンドライブラリが存在する。

中山大障害をはじめとする障害G1レースで流れるのがこの曲である。冒頭から出し惜しみせずに奏でられるダンサブルなラッパが特徴で、障害を飛び越えて競争するシチュエーションにぴったりな前のめりの躍動感を印象付ける。メインメロディーのブラスはもちろん、後ろでせわしなく鳴るシンセやパーカッションも非常に強い存在感を放っていて、明るく楽しく、それと同時に油断ならない切迫感を漂わせながら表現力豊かにレースを彩ってくれる。イントロの反復を終えた24秒あたりで一旦流れが変わり、しなやかで伸びのある旋律を披露した後、続くサビでは主旋律をシンセにバトンタッチし、いっそう派手やかな盛り上がりをみせる。1分過ぎのサビ後半になると再びブラスが主役に返り咲き、すでに十分勢いに満ちているが、さらにもう一段、今まで積み重ねてきた勢いを追い越すような爽やかで煌びやかな疾走感を生み出す。障害競走の最高峰となる舞台でパカパカと駆けていく興奮を見事に捉えた一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。本作のレース曲はどれも素敵ですね。特に欧州レースの『Douce Dame Jolie』、14世紀フランスの歌曲が元になっているものですが、原曲の麗しさに加えて、ハードコアなケルト風アレンジが施されていてとても好みです。あわせてどうぞ。

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