フリーゲーム・三十秒勇者を原作とする、
岩月博之作曲、『草原を駆ける王女』。王女30で流れます。
個人開発者のUUE氏によるフリーゲーム・三十秒勇者を基にしたPSP向けの作品として登場した本作。成り行きで勇者に仕立て上げられた青年・ユウシャは、30秒後に魔王が世界を滅ぼす呪文を唱え終わる前に超速で世界を救うことになる。メインとなるRPG「勇者30」のほか、門限の30秒以内に父親の病を治す薬草を探すシューティング「王女30」、日光に弱い魔王が日の出までの30秒で恋人を救うRTS「魔王30」、敵を全滅させる魔法を唱える賢者を30秒間守り抜くアクション「騎士30」の4種類のゲームがオムニバス形式で収録されている。シナリオから育成要素などのシステム面に至るまで、それぞれのジャンルの定番要素を押さえつつ、30秒という制限時間のなかで成立する形で手際よく凝縮されている点が特徴である。ビジュアル面では、80年代風のレトロなドット絵のグラフィックと、それとは対照的に著名なイラストレーターを起用した豪華な挿絵の双方を取り入れている。各ジャンルの魅力とタイムマネジメントの面白さを掛け合わせ、さくっと遊べるボリューム感で詰め込んだ意欲作に仕上がっている。後にXBLAやSteamでも配信された。
本作の音楽を担当するのは麻中"SHA-V"秀樹氏、足立美奈子氏、石濱翔氏、岩月博之氏、青木佳乃氏、古代祐三氏、駒形めぐみ氏、桜庭統氏、高見沢俊彦氏、中川徹こと柴田徹也氏、葉山宏治氏、日比野則彦氏、冷牟田卓志氏、藤澤健至氏、水谷広実氏、森岡美瑛氏、山田泰正氏、山手安生氏、The Engines、vistlip。麻中氏・冷牟田氏・山田氏・山手氏は元SNKの作曲家で、足立氏・駒形氏は音楽制作会社ピュアサウンド所属、石濱氏は音楽制作集団・MONACAのメンバー、岩月氏はナツメ所属であるなど、主にゲーム音楽の界隈で活躍する様々なクリエイターが一堂に会している。本作ではコミカル寄りだけどオーソドックスなファンタジーの作風に合わせて、ノリと重厚感を両立したパワフルなサウンドが揃っている。サウンドトラックはライナーノーツ付きでボーナストラックも含めて収録されている。
王女30で流れるのがこの曲である。最初のステージをはじめとする各所で流れるメインテーマのような立ち位置である。前述の通り、王女30は門限となる30秒以内に薬草を取りに行くシューティングで、お転婆王女がボウガンを手に兵士に担がれながら驀進することになる。そうした場面を彩るにあたって、エレキギターやハープ、ストリングスを中心とした激しくも爽やかな勢いのある曲調を用いることで、終始一貫してキャッチーでエネルギッシュなスピード感を漂わせる。とりわけハープのグリッサンド（滑るように奏でられる音階）が耳に残りやすく、イントロでの見せ場はもちろん、それ以降も24秒頃や36秒頃など一区切りつくたびに出番が与えられることによって、淑やかな気品と瑞々しい躍動感を印象付ける。サビではギターとストリングスの鮮やかな組み合わせでいっそう華やかに盛り上がり、さながら応援歌を彷彿させるひたむきな疾走感を醸し出す。敵を蹴散らして突き進んでいく感覚がひしひしと伝わってくる一曲である。
この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。可憐な雰囲気と王道な格好良さがうまく融合してますね。
