VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1125 『道中』(井上大介/THE 功夫/PCE)

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ハドソンがおくる横スクロールアクション・THE 功夫より、

井上大介作曲、『道中』。ステージ道中で流れます。

PCエンジン初期のアクションとして登場した本作。功夫の達人・王(ワン)は、暗黒大帝に乗っ取られた中国功夫界の拠点・洛陽閣を奪還すべく立ち上がることになる。全4面で3周構成の強制横スクロールアクションで、当時としては目を見張るほど画期的だった、画面の縦半分を占めるリアル頭身の巨大なキャラグラフィックが特徴である。雰囲気こそカンフー映画さながらのインパクトがあるが、人型以外の敵は謎の蛾や火の玉といった独特なラインナップで、回復アイテムは宙に浮かぶ烏龍茶であるなど、全体的にイロモノ感が漂っている。自機の大きさと比例して当たり判定も大きく、そのうえ強制スクロールであることから、覚えゲーに近いゲームバランスを持つ。アクションは大味で、敵の見た目のバリエーションが限られているなど、粗削りな部分もすくなくないが、グラフィック面においてPCエンジンの性能を存分に見せつけた実験作に仕上がっている。後にバーチャルコンソールゲームアーカイブスで配信されたほか、PCエンジンminiに収録された。

本作ではスタッフロールが存在しないため、公には具体的なスタッフが示されていないが、後になって当時の開発者が明かしたところによると、作曲は井上大介氏が担当しているとのことである。井上氏は80年代後半のハドソン製の作品を多く手がけた作曲家である。本作ではステージ曲もボス曲も1種類のみと曲数はすくないが、いずれの楽曲も東洋のユニークな世界観を捉えた、耳に残りやすく活き活きとした出来栄えとなっている。また、独自のサウンドドライバを用いて楽曲・効果音ともに処理しているという。サウンドトラックについては本作単体では未発売だが、歴代のゲーム音楽を取り揃えたサイトロンレーベルのレジェンドオブゲームミュージックBOXの第3弾のなかに本作の楽曲が収録されている。

ステージ道中で流れるのがこの曲である。前述の通りステージ曲は1種類であるため、すべての面でこの曲が使用されることになる。出だしから短い音価で歯切れ良く奏でれられる旋律が特徴的で、息をつく間もなく音色を鳴らし続けることで、自然と快く響く軽妙なリズム感を生み出す。ノリノリな主旋律の合間に、17~18秒や20~22秒などで徐々に音階を上っていくフレーズを用いることで、前へ前へと突き進む感覚を強く印象付ける。22秒以降で流れが変わり、パーカッションパートを活かしてじりじりと勢いを蓄えた後、40秒あたりでサビを迎えると、これまでのノリとはすこし異なる、勇ましくも哀愁漂う雰囲気を感じさせる。55秒から元の調子を取り戻し、1分10秒頃で派手に締め括って一区切りつけると間もなくループに入って再始動する。前向きな勢い、適度な緊張感、後味の良い聴き心地がすべて揃った一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。サビはズンダラ節みたいな感じですね。とても耳に馴染みます。