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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1366 『Final Boss Theme』(Toshihiro・UMI☆KUUN/Crystal Crisis/NS)

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Nicalisがおくる対戦格闘パズル・クリスタルクライシスより、

Toshihiro・UMI☆KUUN編曲、『Final Boss Theme』。

ストーリーモードのラスボス戦で流れます。

主にインディーゲームの移植や販売を担うアメリカのNicalis社によるクロスオーバー作品として登場した本作。レッドクリスタルの脅威により世界に裂け目が生じ、平行世界からクリスタルを悪用せんと企むヴィランたちが結集したことを受け、同じく平行世界から集ったヒーローたちが戦うことになる。対戦型の落ち物パズルで、2つ1組で落ちてくる色とりどりのクリスタルを同色で繋げ、破壊用のクリスタルをぶつけることで任意のタイミングで消滅させていく。消滅させると敵フィールドに一定ターン破壊不能なクリスタルを落とすことができ、先にフィールドが埋まって手詰まりになったほうが負けとなる。フィールドは左右でループする仕様で、素早く両端を移動できるのみならず、境界をまたげばクリスタルを二分割できる。本作の最大の特徴はキャラの人選で、Nicalis関連のインディー作品から手塚治虫作品のゲスト参戦、その他フリーゲームや広報キャラまで計20人、それぞれよく動くし喋るし、キャラごとに攻守2種の必殺技が用意されるなど、祭りを通り越して混沌の様相を呈している。モードは対戦特化のアーケードのほか、ストーリーモード、ローカル・オンライン対戦、トレーニングなどがあり、雑多なルールやオプションで遊ぶことができる。寄せ集めの魅力を味わえる仕上がりとなっている。後にPS4とSteamでも発売された。

本作の音楽を担当するのはToshihiro Ogihara氏とUMI☆KUUN氏。Toshihiro氏はボカロ楽曲の制作やSoundCloudへの投稿などネットを中心に活動している作編曲家である。UMI☆KUUN氏はうみくん名義でも知られるシンガーソングライター兼YouTuberで、本作の主題歌の歌唱を担当している。本作はクロスオーバー作品という性質上、出典元の作品から楽曲をアレンジしている例が多い。具体的には海腹川背洞窟物語、魔王のアクジ、迷宮城ハイドラ、1001 Spikes、Code of Princess、The Binding of Isaacから引用していて、対戦を盛り上げるためにエレクトロニックでエモーショナルな路線で編曲されている。また、一部オリジナルの楽曲も含まれる。サウンドトラックについてはNicalis公式のYouTubeチャンネルで公開されているほか、作中にもサウンドテストが搭載されている。

ストーリーモードのラスボス戦で流れるのがこの曲である。物語全体の世界観や主役、最終戦の対戦相手に至るまで、本作は洞窟物語を軸とする構成であり、それに関連してこの曲は洞窟物語の隠しダンジョンで流れる『ランニングヘル』(作:Pixel)のアレンジである。速めのテンポでパーカッションをズンズン刻む原曲と比べると、この曲はすこし遅く重い印象があり、クラブミュージック然とした曲調でじわりと焦らす。37~44秒でテンションを高めていった末に45秒からはディストーションだらけのフレーズに突入し、しばらく威圧的で主張の激しいムードが漂う。再度1分7~14秒からテンションを高めると今度はサビに突入し、相変わらず主張は激しいけれど、威圧感よりも開放感を強く滲ませるようになる。1分27秒には一瞬歪んだ音色が入るが、それによって開放的な勢いが乱されることなく、むしろ良いアクセントとなって後続の流れをより活き活きと盛り上げてくれる。脅威を感じさせつつ、それを上回る勇気を与えてくれる一曲である。

『ランニングヘル』の途中から明るくなる感じが、アレンジでもよく活かされてますね。原曲もあわせてどうぞ。

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