VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1109 『夏』(桜庭統/斬IIIスピリッツ/SFC)

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ウルフチームがおくるシミュレーション・斬より、

桜庭統作・編曲、『夏』。戦略フェイズのうち、季節が夏のときに流れます。

上記動画の10:55から15:02まで。

ウルフチーム製の戦国シミュレーション・斬シリーズのナンバリング3作目のスーファミ移植版にあたる本作。戦国乱世を舞台に、開始時に「群雄の光芒(1550年春~)」か「覇権の行方(1600年春~)」のいずれかのシナリオを選択し、任意の武将で天下統一を目指すことになる。1200人にも及ぶ実在武将に加え、名前・顔グラ・能力・家紋を自分好みに設定するオリジナル武将を作成して攻略できる点が特徴である。各季節に戦略フェイズ・三回の行軍フェイズ・戦いが発生すれば戦闘フェイズがあり、戦闘は前作同様の高低差のあるHEX制を採用している。CPUは比較的穏やかで動きがすくない分、プレイヤーが低めの身分でスタートした際の成り上がりの過程がシビアで、仕官から城主任命、謀反に至るまで、遊び方次第で下剋上の醍醐味を味わうことができる。全体的なバランスや難易度は大味なところがあるが、いち早く全武将&新武将プレイを取り入れたことで様々な立場から天下統一できる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは桜庭統氏。音響という括りで氏のほかに初芝弘也氏と田村信二氏もクレジットされている。いずれも当時ウルフチームに所属していた作曲家で、桜庭氏は斬シリーズには初代から携わっている。本作ではPC98版原曲をスーファミ音源にアレンジしていて、歴史ものらしい荘厳で勇猛なサウンドが揃っている。サウンドトラックについては、プロジェクトEGGでPC98版のものが配信されているが、本作のSFC音源に関しては未収録である。

季節が夏のときの戦略フェイズで流れるのがこの曲である。ハープを思わせる丸みを帯びた音で始まり、低く唸る伴奏や静かに拍を打つ打楽器と組み合わさることで、全体的に柔らかい音色を用いつつもずっしりと重厚に響く。イントロ明け(11:12~)には勇ましさ満点の主旋律が入るとともに、ハープが伴奏に移って音階を上り下りするアルペジオを奏でるようになる。また、打楽器が行進曲さながらの力強いリズムを刻むようになり、どこか物悲しくも華麗な印象を与える。50秒(11:45)過ぎの間奏部分では透き通るような音色が加わり、それまでの壮大なムードから一転、しばし穏やかな哀愁を漂わせる。1分23秒(12:18)で勢いを盛り返すと、主旋律が猛々しく響く傍らで、管楽器の裏メロが幾度となく似通ったフレーズを反復することで、先ほどの穏やかな哀愁とは一味異なる、強い悲壮感に満ちた哀愁を滲ませる。その後、2分手前(12:50)でにわかに、それでいて違和感なくループに到達する。冒頭は静かで、イントロ明けは激しく、間奏で再び静かになるも、その後は再び激しくなるという、静と動の対比をうまく活かした一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。原曲の時点でも十分格好良いですが、スーファミ音源との相性が抜群で素晴らしい出来ですね。PC98版もあわせてどうぞ。

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