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#1397 『一騎討ち』(長生淳/三國志IV/SFC)

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光栄がおくる歴史シミュレーション・三國志より、

長生淳作曲、スーファミ版4の『一騎討ち』。一騎討ちの際に流れます。

三国時代を舞台に大陸を統一する三國志シリーズのうち、ナンバリング4作目のスーファミ移植版にあたる本作。開始時にシナリオと君主を選択し、内政や戦争を通じて中国制覇を目指すことになる。シナリオは189年12月開始(董卓の洛陽炎上)から235年2月開始(諸葛亮の没後と三国時代の終焉)まで6種類収録されている。内政に関しては、開発や治水など各コマンドに対して担当する武将と資金を充てることで半自動で実行されるようになった。武将ごとの性能や特殊能力が細かく設けられている分、内政の各工程の手間が軽減されたほか、特殊能力に応じて計略を発動することもできる。戦争では野戦と攻城戦のみならず、最終決戦も加えた三段構えとなり、武将同士の一騎討ちで挑む武力決戦と、兵数で勝敗を決する兵力決戦の2つの選択肢が用意されている。基本的には移植元に忠実だが、グラフィックはハード性能に合わせて簡素化され、処理速度も相応の影響を受けている。従来のナンバリングから順調かつまとまりよくブラッシュアップされた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは長生淳氏。主に吹奏楽やオーケストラの方面で活躍している作編曲家である。ゲーム音楽を担当するのは現時点では後にも先にも本作のみに留まっているようである。本作では例によって機種ごとに音源が異なるなかでも、独特な渋みと凄みを兼ね備えた中華風サウンドを堪能することができる。特にスーファミ版では音源そのものの柔らかさと、オーケストラ楽器や打楽器の重厚さ、メロディーの小粋さがうまく噛み合うことで聴き応え十分な迫力を生み出している。サウンドトラックについてはオーケストラアレンジを施したサウンドウェア盤、シンセアレンジを施した電脳電撃編、提督の決断2とセットでスーファミ音源を収録したものが存在する。

一騎討ちで流れるのがこの曲である。一騎討ちとは前述の通り最終決戦で武将同士がぶつかり合う戦闘のことである。イントロからして中華らしさ全開の五音音階でオーケストラヒットやブラスを大仰に鳴らし、一気に闘志を燃え上がらせてくれる。メインメロディーはどぎついほど勇ましく主張が激しいが、5秒頃から伴奏で低音を中心に粋なベースラインを奏でたり、14秒あたりでストリングスが舞うように滑らかな高音を奏でたりすることで、しっかりと曲全体の調和が取れている。27秒でラッパと交代して笛が主役を担うと、笛の柔和な響きのおかげで、それまではとにかく派手な印象が目立っていた旋律の内から潜在的な美しさを感じ取れるようになる。40秒以降で再び派手な勢いが強まり、42~43秒や45~46秒でみられるように一定間隔で一際パワフルなオーケストラヒットを配置することで中弛みしないテンションを維持し続ける。ここ一番の大勝負に全身全霊が逸り昂る感覚がよく伝わってくる一曲である。

この曲を紹介してほしいというリクエストをいただきました。バイタリティあふれる曲ですね。電脳電撃編では『散華』という曲名で、ゴリゴリのシンセロックアレンジです。あわせてどうぞ。

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