VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1408 『紺碧の彷徨』(山根ミチル/悪魔城ドラキュラ 奪われた刻印/NDS)

www.youtube.com

コナミがおくるアクション・悪魔城ドラキュラより、

山根ミチル作曲、奪われた刻印の『紺碧の彷徨』。ソムヌス岩礁で流れます。

ヴァンパイアハンターの活躍を描く悪魔城ドラキュラシリーズのうち、DS向け第3弾にあたる本作。19世紀初頭、特務組織・エクレシアがグリフと呼ばれる呪印を用いたドラキュラ討伐の秘術を入手し、組織所属の女戦士・シャノアが秘術の担い手となるも、兄弟子のアルバスに秘術を強奪されたことを受け、これを取り戻すべく旅立つことになる。シリーズでは珍しい単独女性主人公を採用していて、DS向け前2作のライト寄りな作風から変わって、本作では往年のダークでクールな路線に回帰している。本作の特徴はグリフを軸とした新システムで、シャノアは通常の武器を持たない代わりに両手と背中にグリフを装備することができる。グリフは道中に隠されたものを見つけたり敵から入手したりすることで収集可能で、両手には攻撃や防御系、背中には移動の補助や能力強化などのサポート系のグリフを割り当てられる。加えて合成印術という両手のグリフを合体させた強力な必殺技があり、グリフの組み合わせ次第で様々な効果を発揮する。メインの探索アクション要素のほかに、村人の救出やクエスト、図鑑埋め、クリア後の新モードなど、寄り道・やり込み系の遊びも充実している。DS最後のシリーズ作品として旧作に近い骨太で重厚な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは市橋康弘氏と山根ミチル氏。市橋氏は当時、山根氏は発売時には退社済みだが直前までコナミに所属していた作曲家である。シリーズの作曲経験に関しては、市橋氏は前年のXクロニクルからサウンドディレクターおよび効果音も兼任で携わり始めたためシリーズ歴が浅いが、山根氏はメガドライブバンパイアキラーから15年近く携わり続けているベテランである。本作ではゴシックホラーらしい美しさと禍々しさを湛えつつ、ときに激しく疾走感のあるサウンドが多く取り揃えられている。サウンドトラックは当初、特別版の購入特典として同梱され、後に市販されたほか、シリーズの楽曲を集めたCD-BOXなどにも本作の楽曲が収録されている。

ソムヌス岩礁で流れるのがこの曲である。蒼く美しい景観が広がる穏やかな海域だが、海底には危険な水棲の魔物が待ち構える。そうしたなか、手始めに張り詰めた高音のストリングスと、あてどなく揺蕩うような調子で紡がれるピアノを組み合わせて、どこかオリエンタルでメランコリックな響きを帯びたイントロを奏でる。13秒あたりでメインメロディーが加わると、オリエンタルな響きはやや薄まるもののメランコリックな響きは依然として留まる。絶えずシャカシャカと鳴る打楽器や静かに音程を上下するハープの伴奏、三拍子のリズム感と相まって独特な焦れと憂いを漂わせる。イントロと比べてストリングスが中低音域に移動したことで、いくらか張り詰めた雰囲気は緩和されたが、かえって深みからじわじわと迫ってくるような不穏さがある。ストリングスはほぼ終始、裏方に徹して和音を奏で続けるが、48~49秒で音階を上るフレーズがあり、それを境にピアノとタンバリンが物悲しくも鮮やかな盛り上がりをみせる。サビを越えた先、ループ手前の1分13~19秒の間奏部分は、沈静化しつつ緊張感と悲壮感のバランスを絶妙に保っていて、すんなりと次のループへと繋がっていく。水の神秘とゆらめきが巧みに表現された一曲である。

引き込まれますね。山根さんご本人がソロピアノで10分以上にわたって演奏している動画があって、これがまた聴き進めるほどにどんどん引き込まれていく感覚が味わえる逸品です。あわせてどうぞ。

www.youtube.com