VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1407 『Lands Eternally』(伊師正好/かえるの絵本~なくした記憶を求めて~/PS)

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ビクターインタラクティブソフトウエアがおくるRPGかえるの絵本より、

伊師正好作曲、『Lands Eternally』。フィールドで流れます。

上記動画の7:31から9:18まで。

牧場物語シリーズで知られるビクター発売のファンタジック育成RPGとして登場した本作。呪いによって記憶を失い、かえるの姿になってしまった主人公は、森の賢者の手引きで一年だけ人間に戻れるようになり、なくした記憶を辿りながら呪いを解く手立てを探すことになる。絵本仕立ての上品で温もりのある世界観と、RPGをベースにしつつ時限でシナリオ分岐、シミュレーション風の育成パート、キャラの友好度(主人公は男女選択制で恋愛エンドあり)などを積極的に取り入れた作風が特徴である。冒険者の街を拠点に、4月から翌年3月までの期間内に酒場の依頼をこなしたり計13人の仲間と交流したりしながら進めていく。主に街の外に出かけて探索や戦闘をおこなう冒険パートと、5日分のスケジュールを組んで仕事や訓練をおこなって各種能力値を向上させる育成パートに分かれている。要所要所で追うべきメインシナリオが挿し込まれるが、それ以外は基本的に誰と何をして過ごすかはプレイヤーの裁量に任されている。メインシナリオや仲間にまつわるシナリオを進めると、節目ごとにその内容が絵本に記録され、最終的にゲームクリア時に一冊の絵本が完成する仕組みである。総じて素敵な雰囲気がある仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは伊師正好氏。スタッフロールではCHAMY名義でクレジットされている。音楽制作会社T's MUSICに所属している作曲家である。本作では温かな世界観にあわせて、バグパイプリュートを用いた幻想的なケルトサウンドと優雅なオーケストラサウンドを組み合わている。魅力あるメルヘンチックな作風を表現するにあたって、ポップな雰囲気よりも落ち着いた雰囲気を重視していて、全体的に穏やかな聴き心地がある。サウンドトラックは1枚組で収録されている。

街の外のフィールドで流れるのがこの曲である。細かく休みなく奏でられる木琴、柔らかく寄り添うギター、周期的に響くストリングスが織り成す魔法のようなイントロによって、瞬く間にあふれんばかりの没入感を生み出す。13秒(上記動画の7:44)あたりから笛の主旋律が加わると、木琴は息を潜め、ストリングスはピンポイントで響いていた状態から代わって伴奏の一環として長く滑らかな音色を披露するようになる。さらに進んで28秒(7:59)頃になるとバグパイプの特徴的な音色が聴こえ始める。イントロは瞬時に心を掴まれる即効性があるが、笛とバグパイプのくだりは聴き進めるうちに染みてくる遅効性の没入感があるように感じられる。ループを経ることで木琴主体のフレーズと、笛とバグパイプのフレーズを交互に繰り返し、聴けば聴くほど深みへと誘われる感覚を味わえる。洗練された心地良さに浸れる一曲である。

瑞々しく躍動感があるなかでも、聴いていると心身が浄化されるような感じがあって、とても癒されますね。