スクエニがおくるワンダーアクション・バランワンダーワールドより、
山﨑良作曲、『盤上の旅人』。第7章のステージで流れます。
ソニックで知られる中裕司氏とナイツで知られる大島直人氏を軸に開発された本作。人間関係の悩みを抱えた主人公は、謎のマエストロ・バランに導かれて辿り着いた心象世界・ワンダーワールドで、悩める12人の心のなかを旅して大切なものを取り戻すことになる。箱庭型の3Dアクションで、人の心の風景を映し出した12のワールドで、それぞれ異なるアクションを可能とする80種類以上のコスチュームを使い分けながら、各地に隠されたスタチューを集めて進めていく。作中のシナリオ描写は言葉少なで、ボスを撃破するとみんなで踊るムービーが入るなど、ミュージカルをテーマにした独特な雰囲気を楽しめる。コスチュームの数こそ多いが、一つの衣装につき一つのアクションしか扱えない(ジャンプするにはジャンプ用の、攻撃するには攻撃用の衣装に都度切り替える必要があるなど)簡素なつくりとなっている。仕様面の不足感や歯がゆさはあるが、メルヘンチックな世界観が印象的な意欲作に仕上がっている。
本作の音楽を担当するのは穴沢弘慶氏と山﨑良氏。編曲担当として小林洋平氏(主にビッグバンドアレンジ)と山本友樹氏(主にオーケストレーション)も携わっている。メインコンポーザーの山﨑氏はスクエニ所属の作曲家で、穴沢氏と小林氏は洗足学園音楽大学で教鞭を執る作・編曲家、山本氏は英国在住のフリーランスである。本作では音楽による雰囲気づくりを重視したバラエティ豊かな楽曲が揃っていて、民族音楽調やイージーリスニングはもちろん、造語歌詞やコーラスを取り入れたエキゾチックなサウンドも揃っている。サウンドトラックはPVで使用されたものなどのボーナストラックも含めて2枚組で収録されている。
第7章「栄光が忘れられない元チャンピオン」のステージで流れるのがこの曲である。これまで連戦連勝を重ねてきたが、挑戦者に敗れて自暴自棄になったチェスプレイヤーの心象世界には、至るところに巨大なチェスの駒や、城を思わせる構造物がある。白と黒のコントラストが映えるステージを彩るにあたって、曲冒頭から非常に特徴的なバグパイプの音色が響き渡る。37秒あたりで長いイントロが明けると、柔らかなギターが主旋律を務める傍ら、後ろのほうで短めの間隔でコーラスやストリングス、パーカッションが小気味良いアクセントを添える。1分15秒以降はすこし雰囲気が変わり、歌声や笛をフィーチャーして伸び伸びとした癒しの旋律を奏でる。2分過ぎには優雅なハープシコードも加わり、気高い雰囲気に磨きをかける。ケルト風味の曲調で栄光に酔い痴れる感覚を表現した一曲である。
これほど強烈に耳に残るバグパイプを、イントロでしか使っていない(=次のループまで現れない)あたり、何とも絶妙な曲構成ですね。