VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#1036 『ゲームクリア』(豊田亜矢子/零~紅い蝶~/PS2)

www.youtube.com

テクモがおくるホラーアドベンチャー・零より、

豊田亜矢子作曲、紅い蝶の『ゲームクリア』。リザルト画面で流れます。

和風ホラーの世界観とカメラを用いた操作が印象的な零シリーズの2作目にあたる本作。夏休みに故郷に帰ってきた双子の姉妹・繭と澪は、過去に繭が足に大怪我をした場所で思い出に浸っていたところ、気付けば霧に覆われ、地図から消えた廃村に迷い込むことになる。前作同様、射影機で霊に挑むシステムや和で統一された作風は健在で、本作では村全体が舞台となった点、高威力かつ霊をのけぞらせる効果を持つ新要素・フェイタルフレームが登場した点が特徴である。操作キャラは基本的に妹の澪で、足が悪く霊感が強い(=霊に憑依されやすい)繭を庇いながら立ち回る必要があるなど、前作とは異なる恐怖体験を味わえる。姉妹愛を軸とした脆く儚く衝撃的な物語と相まって、身に染みる怖さを実感できる仕上がりとなっている。後にXbox向けのディレクターズカットやWii向けのリメイクが登場した。

本作の音楽を担当するのは豊田亜矢子氏。テクモ(現コーエーテクモ)に所属する作曲家で、前作に引き続き携わっているシリーズサウンドの要である。また、主題歌が採用されたのは本作が初めてで、シンガーソングライターの天野月子(現在の名義は天野月)氏を本作および以降の作品で起用している。力強さと美しさを兼ね備えた主題歌を引き立てるかのように、インゲームの楽曲は静かでさりげない環境音が中心で、廃村ならではの臨場感を生み出している。サウンドトラックは主題歌のシングル以外は未発売だが、濡鴉ノ巫女のリマスター版の発売に際して登場した20周年記念デジタルアートブックに歴代シリーズ作品のサウンドテスト機能が含まれている。

リザルト画面で流れるのがこの曲である。スタッフロールの後、クリア時間やランクが表示される最後の一幕を、ピアノと弦の張り詰めた旋律で余韻たっぷりに彩る。煌びやかなピアノの高音と、寄せては返すような弦の低音に、心臓を思わせる打音が組み合わさることで、只ならぬ緊張感を漂わせる。曲全体が似通ったフレーズの反復で構成されているため、大きく曲調が変化することはないが、そうであるからこそいつまでも心にわだかまり続けるような、そのおかげでかえって茫然と聴き浸れるような不吉な心地良さを生む。尾を引くような結末にふさわしい一曲である。

ゲームを終えたことの達成感の代わりに喪失感を与えてくれるような気がします。特に本作の世界観が詰まった主題歌を聴いた後ですからなおのこと。『蝶』、あわせてどうぞ。

www.youtube.com