ハドソンがおくるアクション・ドレミファンタジーより、
竹間淳作曲、『Toying Around』。おもちゃの町で流れます。
音楽とアクションを巧みに絡めた作風で知られる迷宮組曲の後継作として、スーファミ向けに登場した本作。歌声や音楽で賑わうピッコロ村に暮らす主人公の少年・ミロンは、魔人アモンによって盗まれた楽器と、楽器と一緒に攫われた妖精のエリスを取り返すべく、冒険に出ることになる。前作は2D探索型アクション(今でいうメトロイドヴァニアのようなゲーム性)だったが、本作はオーソドックスなステージクリア型の横スクロールアクションである。ジャンプや移動、シャボン玉による攻撃を駆使しながら、各エリアに点在するスターオンプを集め、ステージごとに5つ揃えるとボス戦に挑んで楽器の封印を解くことができる。楽器を入手することで新たなアクションが解放される仕組みで、多彩なギミックを乗り越える醍醐味に加えて、道中でミロンが見せるコミカルでキュートな仕草や表情を楽しむことができる。カラフルでメルヘンチックなグラフィックと、親しみやすいがそれなりに歯応えのあるアクションが組み合わさった仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは竹間淳氏。スタッフロールではJUN CHIKI CHIKUMAとしてクレジットされている。氏はアラブ音楽の演奏家として活動する傍ら、ゲーム音楽方面では主にボンバーマンシリーズをはじめとするハドソン製の作品に携わっている。本作では前作(作曲担当は国本剛章氏と井上大介氏)の音楽性を引き継いで、ワルツ風の優しく小気味良い楽曲が揃っている。全体的に主張はおとなしいが、雰囲気にそっと寄り添うローファイやアンビエント系のサウンドが収録されている。サウンドトラックは未発売だが、氏のSoundCloudで楽曲が公開されているほか、作中にサウンドテストが存在する。
おもちゃの町で流れるのがこの曲である。終盤のステージで、ブロック玩具で形作られた町並みに、びっくり箱やラジコンの飛行機といった仕掛けが散りばめられている。そこで流れるこの曲は、おかしの国で流れる『Dessert Paradise』やスタッフロールで流れる『Ending』と旋律を共有するアレンジである。『Dessert Paradise』はローファイポップ感が強く、『Ending』はボサノヴァ感が強いなかで、この曲は相対的に癖のすくない素朴な響きを持つ。ピアノを思わせる柔らかい旋律に、ウッドベースの心地良い演奏、タンバリンの無邪気なリズムが絡み合うことで、楽しいようで切ないような、三拍子特有の温もりを感じさせる。メインメロディーの味わい深さに加えて、26秒からしばらく紡がれる間奏部分の華やかさが印象的である。52秒からはやや明るめな調子で旋律を奏でるが、やがて穏やかに収束すると、ループ間際となる1分15~16秒でウッドベースの短いソロパートが入って綺麗に仕切り直す。童心に立ち返らせてくれるような一曲である。
聴いていると嬉しいけど無性に哀しいような、不思議な感覚に包まれます。『Dessert Paradise』と『Ending』もあわせてどうぞ。