小林早織作曲、『フィールド(くさのくに)』(仮称)。くさのくにで流れます。
1995年、ゲームギア末期のトップビュー型アクションRPGとして登場した本作。ひょんなきっかけで異世界・シルヴァラントに呼び寄せられた少年・ゼッツは、動物に転身できるシードの力を借りて、世界を破滅に導こうとする巨悪に立ち向かうことになる。シードを使うことでカメやネズミ、人魚など、様々な姿に変身でき、変身形態に応じた特殊能力を駆使して道中のからくりを解いて先に進めるようになる。ハードの性能を活かした色鮮やかなグラフィックと、そこそこ歯応えのある良質なゲーム性とが相まって、手堅くまとまった秀逸な仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは小林早織氏。当時セガに所属していた作曲家で、本作は氏にとってかなり初期の担当作品である。音の制約が多いなかで、PSG音源を用いて奏でられるサウンドは、いずれもハイファンタジー調の世界観にぴったりな、起伏に富んだものに仕上がっている。サウンドトラック等は発売されていないため、曲名は便宜上の仮称とする。
オープニングが明けて最初に訪れることになるくさのくには、辺り一面草原が広がる豊かな土地である。そこのフィールドで流れるこの曲は、オープニングの際に流れる曲の寂寥感あふれる旋律を、オクターブを下げてテンポを上昇させることで勇ましくアレンジしたものであり、スタッフロールの曲にも一部メロディーラインが用いられることから、本作のメインテーマ的な位置づけと言っても過言ではない。王道な冒険譚の幕開けにふさわしい前向きでファンタジックな音使いは、PSG音源特有のざらつきがあってこそより美しく映え、旋律と音源の両方の魅力が存分に引き出されている。
明るくてちょっぴり切なさもあるような、フィールド曲の魅力がたっぷり詰まってますね。