古川典裕作曲、『眩き旅路 -feel turmeric-』。金色砂丘で流れます。
元ジブリの作画監督がアートディレクターを手がける完全新作として登場した本作。六つの魔法と七つの杖に守られていたはずの大地を舞台に、破滅を呼ぶ黄昏の歌姫によって魔物であふれ、人類が絶望に包まれるなか、新米魔導士の少年・アイザックが厄災に立ち向かうことになる。分岐ありの全五幕構成、公式ジャンルはアクションRPGだが、刻一刻と変わる戦況に対してタッチペンでルーン(魔法文字)を描いたり仲間の魔物を指揮したりして進めるリアルタイムストラテジー風のゲーム性が特徴である。ルーンの組み合わせ次第で400近くの魔法が用意されていて、文字の上に文字を重ねるダブルーン、さらに重ねるトリプルーンなど好奇心をそそる多彩なラインナップが揃っている。全体的な雰囲気やシナリオの流れはありきたりで、絵柄は柔らかく温かみがあるなかでも、ゲームバランスはなかなか練られていて、一筋縄ではいかないが戦略の幅を活かして試行錯誤を繰り返す醍醐味が味わえる。また、Wi-Fiを介した通信対戦にも対応していて、プレイヤー同士で魔法対決することができた(Wi-Fiサービスは終了済み)。総じて発想の面白さと直感性と戦略性を兼ね備えた仕上がりとなっている。
本作の音楽を担当するのは古川典裕氏。かつてタイトーに所属していたフリーランスの作曲家である。本作の後継作であるタクトオブマジックでも引き続き作曲することになる。本作ではファンタジーの作風に沿った瑞々しくも謎めいたオーケストラや民族系のサウンドが中心で、いわゆる騎士道的な勇ましさはやや抑えめである分、魔導士らしい軽妙な気品が随所に感じられる。サウンドトラックには短いジングルも含めて収録されていて、全体的に曲名が詩的で英語の副題が添えられている点が象徴的である。
金色砂丘で流れるのがこの曲である。第三幕で初めて訪れる、流砂のギミックが特徴的なマップで、地のマナを司る場所でもある。開始早々から行進曲のような盤石なリズムにきらきらと輝く高音を散りばめたイントロが非常に耳に残る。19秒から入るメインメロディーはさらに味わい深く、細やかなギターの伴奏にサンポーニャのようなアンデス系の笛の音が絡み合うことで、荒涼としつつ昂揚感を誘う独自の雰囲気を生む。間奏を挟みながら二度ほど同じフレーズを繰り返した後、1分8秒から鋭く吠えるストリングスの低音を交えて新たなパートに突入する。徐々にテンションを蓄え、1分23秒以降ぐっと盛り上げていくと、直前でパンパンと手拍子を叩いてからサビへと繋げる。メロディアスな主旋律に合わせるように、伴奏のギターも今まで以上に滑らかで流麗な演奏を披露する。一連のサビが終わっても見せ場は尽きず、2分7秒からしばらく、鉄琴とともに笛が時間差で木霊するように響き渡る。やがて収束すると2分27秒で次のループに入る。流砂に足を取られるように、音を通じてじわりと搦め取られる感覚が味わえる一曲である。
砂漠系BGMのトップクラスのお気に入りです。ちなみにturmericはターメリック、要はウコンですね。