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#1446 『城』(増子司/ダンジョンエクスプローラー/PCE)

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アトラスがおくるアクションRPGダンジョンエクスプローラーより、

増子司作曲、『城』(仮称)。城で流れます。

PCエンジン初期の作品として登場した本作。魔物に襲われ平和を奪われたコーネリア王国を舞台に、王の命を受けた勇者たちは、世界を支配する力を持つ秘宝・アイラの玉を探し求めて冒険することになる。ダンジョン攻略に重きを置いた見下ろし型のアクションRPGで、開始時に8つある職業から一つ選んで冒険を進めていく。各職業には白魔法と黒魔法で計2種類の専用技が用意されていて、FIGHTERなら自己強化の魔法、WARLOCKなら敵の動きを封じる魔法、変わり種のBIRDなら作中で流れるBGMを変える魔法など、個性的なものが揃っている。魔法以外の攻撃手段は主に遠方からの射撃(ショット)で、近接攻撃主体のアクションとは一味異なるシューティング的な雰囲気がある。本作の最大の特徴はマルチタップとパッドがあれば最大5人まで同時プレイできる点で、職業被りなしで役割分担しながら協力する楽しさを味わうことができる。道中は適度に謎解きや仕掛けが充実していて、程よく遊び応えのある仕上がりとなっている。後にPCエンジンminiに収録された。

本作の音楽を担当するのは増子司氏。当時アトラスに所属していた作曲家である。スタッフロールではDosanko Macco名義でクレジットされている。ダンジョンエクスプローラーシリーズには本作の他にスーファミのクリスタルビーンズにも携わっていて、本作の楽曲はシリーズ内でよくアレンジされている。本作ではPCエンジンならではの澄んだ音色を駆使した重厚感あふれるサウンドが取り揃えられている。全体的な傾向としては暗くシリアスな印象が強いが、なかには疾走感のあるアップテンポなものも存在する。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

城で流れるのがこの曲である。王の居城であり、ダンジョンを踏破するたびに次の行き先を教えてくれて餞別をもらえる。通常にプレイすれば度々立ち寄ることになる場所を彩るにあたって、パイプオルガン風の威厳に満ちた音色を用いて謁見の緊張感を表現している。音の隅々から高貴な空気感が漂っているものの、城と言って連想する華やかで煌びやかなイメージは薄く、国を憂う王の在り様を印象付けてくれる。はじめは長く音色を引き延ばして貫禄のあるハーモニーを生み出しているが、13秒頃から伴奏が勢いづいて細やかに音階を行き来し、さらに19秒頃からは主旋律も右に倣って目まぐるしい展開をみせるようになる。その曲調には只ならぬ凄みがあり、勇者として重責を担うプレッシャーが感じられる。王が放つ威容と勇者が持つ使命感、双方を同時に味わえる一曲である。

パイプオルガン風ですが、ハープシコードや弦楽重奏で鳴らしても合いそうですよね。2やクリスタルビーンズのアレンジもあわせてどうぞ。

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