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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#568 『廃墟』(増子司/真・女神転生/SFC)

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アトラスがおくるRPG真・女神転生より、

増子司作曲、『廃墟』。東京崩壊後のフィールドで流れます。

ファミコンで発売されてきた女神転生シリーズに、新たに「真」を冠してシリーズのリニューアルを図った本作。東京は吉祥寺を舞台に、奇妙な夢と猟奇殺人事件をめぐるディープな物語が展開することになる。勧善懲悪に囚われない複雑で終末思想的な世界観が何よりの特徴で、ロウルートに属するメシア教と、カオスルートに属するガイア教の宗教対立が色濃く描かれるなか、主人公の行動と選択次第でどちらに属するか、あるいはどちらにも属さずニュートラルを目指すか、エンディングが分岐する仕組みとなっている。その独創的なゲーム性は、発売当時、非常に斬新な存在感を放ち、後のシリーズの基礎をつくり上げるに至った。後にPCエンジンメガCD、PS、GBAなどに移植された。

本作の音楽を担当するのは増子司氏。かつてアトラスに所属していた作曲家で、本作発売前にはすでに退社してフリーランスとして活躍していた。氏は初期の「真」を冠さない女神転生2作でも作曲していて、今でこそシリーズサウンドに携わらなくなったが、女神転生および真・女神転生シリーズの退廃的な音楽性を決定づけた張本人である。本作でも激しいロックや神秘的なクワイア、荘厳なゴスペルなど、どこか鬱屈した雰囲気を漂わせた重厚なサウンドが揃っている。なお、移植の際にはそれぞれのハードに見合った編曲がなされている。サウンドトラックにはオリジナルのSFC音源に加え、西脇辰弥氏がアレンジしたトラックも収録されている。

本作における物語の大きな転換点として、東京に核兵器が撃ち込まれることになるが、その崩壊後の東京にて流れるのがこの曲である。透き通るような素朴な音色と、捉えどころのない五拍子のリズムが特徴的なフィールド曲で、目の前の惨状は決して穏やかならざるものであるのに対し、せめてこの曲だけはわずかに救いをもたらしてくれるような安らぎに満ちている。その寂寥感と清涼感あふれる音使いは、静謐さのなかにかすかな希望が宿っているように感じられるが、同時にそれは諦めに似た絶望的な儚さであるようにも感じられ、いかようにも分岐し得る東京の未来を象徴しているかのようである。「廃墟」ということばに込められた意味が、音の隅々にまで染み渡った一曲である。

いろいろアレンジはありますが、一番印象に残るのはメガCD版でしょうか。アレンジャーは、にしのけいすけさんと、しんどうまさみつさん(漢字表記は分かりません)だそうで、フィールドというよりはダンジョン曲っぽい仕上がりです。あわせてどうぞ。

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